「都市に必要とされる山村づくり」〜自立型地域づくりの実践から〜

静岡大学人文学部名誉教授 小櫻義明 氏 から次のような講演があった。(要旨)

 私は40年以上地域問題に関わっている。静岡県内はくまなく歩いた。静岡県の地域づくり団体の代表幹事を務めている。平成6年から静岡県内の山村に居住し、平成20年にはそこに家を建てた。標高780mで現在の定住世帯は5世帯。そこで村づくにも取組んでいる。村づくりを実践している中から感じてきたことをお話する。
 外から見る山村と内から見る山村にはギャップがある。山村がやたら美化されることがあるが、現実はそんな甘いものではない。山村の人はあれがない、これがないと不満を言うが、すばらしいものを持っていることに気がつかない、当たり前と思っている。都会の人が田舎に入ってくれば、田舎は変わる。また、問題意識を持って一旦田舎を出た人が戻ってくれば変わる。
 山村活性化の類型には3つある。企業経営型山村、自給自足型山村、都市連携型山村であるが、それぞれ、リーダー、担い手、価値観、立地条件等様々な要件が備わっていることが求められる。
 都市との連携ということでは、5年前から「農家による縁側お茶カフェ」を実施している。これは、農家の縁側で地域特産のお茶とお茶受けを提供し、一定の料金をいただくものであるが、縁側は都会の人には魅力的であり、地域の産物を賞味できる喜びもある。産直では顔写真を掲示しているものがあるが、農家に足を運んでもらうことで、消費者を仲間にすることができる。集落全体で取組めば、農家ごとに違ったものが提供されるので、何度でも来てもらえることになる。この試みは、テレビでも取り上げられ、他県でも実施されているところがあるようである。
 私の住んでいる集落から中心集落まではものすごく離れており、交通手段の確保が難しい。このため、私の車に6人乗せて買い物ツアーを実施している。一定の料金はいただくが、交通行政の面からは一定の制約はあるようだ。一緒に行く買物には、おしゃべり、バックミュージックから流れる昔の流行歌の合唱など楽しみがいくらでもある。さらに、自分で栽培、採取した産物を社会福祉協議会が斡旋してくれた場所で即売し、そのお金で買い物をすることもできる。
 息子が都会に出て残された高齢者のことを、残った隣家の人がなぜ心配しなければいけないのか、言われる。集落を支える人材をどのように確保するかが問題である。その解決には、山村と都市との距離等によって対応が異なる。移住・交流によって地域に欠けている層を補うことができればいい。
 山村は奥深い。それぞれ地域の伝統、歴史を持っている。暮らし方、風習も異なる。現場を踏まえて、地域づくりを行っていくことが大事だ。
 生活に困っているから助けてくれとの泣き言ではだめだ。知的労働の人がこれからさらに増えるであろうが、その人達にとって、自然に触れて癒されることは不可欠だ。このような人達が訪れる場を提供していくのも山村の大きな役割の一つではないか。
自信と誇りを持って取組んでいくことが大事だ。