平成29年度の全国山村振興連盟関東ブロック会議が、8月29日(火)〜30日(水)の2日間にわたり群馬県支部(支部長 熊川 栄 嬬恋村長)の主催により、群馬県吾妻郡嬬恋村「東海大学嬬恋高原研修センター」において、管内の会員、支部事務局、来賓等約120名が参加して開催された。
 会議は、群馬県支部(事務局:群馬県地域政策課) 勝見 洋介 係長の司会のもとで進められ、その概要は次のとおりとなっている。

1.挨拶、来賓紹介
 主催者挨拶が熊川 栄 群馬県支部長から、来賓挨拶が向田忠正 群馬県企画部長及び衆議院議員 宮腰光寛 内閣総理大臣補佐官(前全国山村振興連盟会長)からあった。

(1)熊川 群馬県支部長挨拶要旨
 本日は公務ご多忙のところ、御来賓の皆様をはじめ、山村振興に携わる皆様にお集まりいただきありがとうございます。多くの皆さまにご出席いただいたこと、心から感謝申し上げます。
そして、本日は、全国山村振興連盟の前会長である宮腰光寛 衆議院議員にも特別にお越しいただいております。宮腰先生は、先日の内閣改造において内閣総理大臣補佐官に就任されたところです。本日は公務で大変お忙しいところ御出席いただきました。誠にありがとうございます。
 また、農林水産省、国土交通省、総務省、林野庁の皆様にもお忙しいなか御出席いただき、大変ありがとうございます。
 さて、ここ嬬恋村は群馬県の北西部に位置しており、浅間山・四阿山・白根山といった標高2,000m級の山々に囲まれています。平均気温が8℃前後と、夏でも涼しく、冷涼な気候が特徴です。そのため高原野菜の栽培が盛んであり、特に夏秋キャ ベツの生産量は圧倒的に日本一です。ここ4年間、出荷量は約2,200万ケース、単価1千円で販売額は約220億円前後に達しています。
 その他にも浅間高原一帯には別荘地域が形成されています。夏に冷涼な気候を求める人で観光リゾート地として賑います。軽井沢町の別荘数は約14,500棟、嬬恋村の別荘数は約9,300棟であり、夏秋キャベツの村であるとともに、別荘地を沢山抱えたリゾート地でもあります。さらに、温泉も豊富で、本日の宿泊先である「万座温泉」もその一つです。白根山の懐、標高1,800mに位置しており、「星に一番近い温泉」、「長寿の湯」としても有名な万座温泉。宿泊される方は、温泉で日頃の疲れを癒していただきればと思います。
 さて、今日の山村地域を取り巻く環境は非常に厳しい状況にあります。昭和40年に山村振興法が制定されて以来、さまざまな山村振興対策が実施されていますが、多くの山村地域では、人口減少や高齢化の進展、所得の低迷や雇用機会の減少など、依然として厳しい状況が続いています。
 こうした中、近年では、「田園回帰」と呼ばれる都市部から山村地域への人の流れ、移住・定住が活発化しています。山村地域の持つ「価値」、「魅力」といったものが改めて認識された結果だと思います。これも全国山村振興連盟をはじめ、関係の皆様の長年に渡るご尽力の賜物と思います。  本村としても移住相談の専門窓口「移住・集落支援室」を立ち上げ、移住・定住の促進に取り組むほか、熱意ある若者を都市部から受け入れる「地域おこし協力隊員」制度や集落の見回り・相談を担う「集落支援員」制度なども活用して、地域の活性化に努めています。群馬県全体で地域おこし協力隊をやろうということで、現在は71名になっています。いずれ群馬県は日本一になりたいなと思っています。
 また、集落支援員については、村内11地区の全区長が支援員となり、この制度を活用しています。
 本日は、関係省庁の皆さんからから山村振興に関する国の施策を紹介いただくことになっていますが、よくお聴き取りいただき、自らの自治体で活用していただければと思います。
 結びに、本日、御出席の皆様の御健勝と山村地域の益々の発展を祈念申し、歓迎と御礼の御挨拶とさせていただきます。

(2)向田 群馬県企画部長挨拶要旨(大澤正明 知事代理)
 山村地域は国土の約5割を占める一方、面積の約8割が森林に覆われまとまった平地が少ない等平野部に比べて地理的条件が厳しい状況にあるわけで、国土の保全・水源の涵養・自然環境の保全等に重要な役割を担っています。しかしながら、農林漁業の衰退等により高度経済成長期以降、若年層を中心に人口の流出が著しく、過疎化と高齢化が急速に進み、農林地の管理が十分に行えない等の問題が深刻化しています。
 本県でも関係市町村、全国山村振興連盟群馬県支部とも連携しながら、生活環境の整備や移住・定住の推進等により持続可能な振興山村の実現、山村地域の活性化に取り組んでいます。本日お集まりの関係の皆さまにおかれましては、引き続きご支援・ご協力を賜りたいと存じます。
 現在、群馬県ではJR東日本とともに「水」と「山」をテーマに観光キャンペーンを実施しています。この機会に県内各地に足を運んでいただければ幸いです。

(3)宮腰 内閣総理大臣補佐官挨拶要旨
 このたび、ふるさとづくりの推進及び農林水産物の輸出振興を担当する内閣総理大臣補佐官に就任しました。兼務はできないということで全国山村振興連盟会長を退任しましたが、私の職務は当連盟の活動と切り離せないものだと思っています。
 以前、増田寛也先生が「地方消滅」と言われました。それに反して小田切徳美先生は「田園回帰」、「農山村は消滅しない」という本を出版されました。小田切先生とは長い付き合いですが、先日もふるさとづくりをどうやって推進していくか相談させていただいたところです。全国にいろんなふるさとづくりが行われていますが、そういう中で、特徴的なものをしっかりと全国展開していただくとという気持ちでこれからも全力で頑張っていきたいと思います。
 輸出問題の関係では、関東ブロック、東北を含めて原発の関係で未だに農産物の輸出ができないという地域があります。ここに来る途中、キャベツ畑を見せてもらいました。振興山村の指定を受けている村でこれだけ見事な農地が拡がっているところは他にはなかなかないのではないかと見惚れていました。嬬恋村が長野県であればこのキャベツが文句なしで輸出できる。群馬県のエリアにあるというだけで輸出ができない。これについては皆さんに喜んでいただけるように総理の指示の下でなんとか打開していく仕事をやっていきたいと思います。
 山村が抱えている問題は熊川村長さん、向田企画部長さんがおっしゃったとおりです。私もこれまで山村振興法の抜本改正を行い、山村活性化支援交付金の創設などを実施してきました。  今年は森林環境税の具体化という作業がこれから年末にかけて取り組んでいかなければいけない大事な時期になっています。一番大事なのは県との調整です。その調整に林野庁、総務省が中心となって取り組んでいただいています。基本は市町村の財源となるものであすが、市町村の森林整備のための体制づくりも当然必要となってきます。その辺をしっかり詰めたうえで年末には間違いなく森林環境税の創設という結果にもっていかなければいけないと考えています。
 農林水産省では今年度から中山間地域に400億円の優先枠を設ける「中山間地農業ルネッサンス推進事業」がはじまりました。平成30年度は500億円を要求することになっています。
 その他にもいろんな動きがあります。地方に移住・定住をしていただくといった場合、例えばNPO法人で働く方々が、その時々の収入だけではなくて、将来をちゃんと見通せるような年金のあり方をしっかり検討していかなくてはならないのではないか。それを検討する議員連盟を秋に立ち上げたいという話をお聞きました。
 日本の国、この国のかたち、都市だけに人が集まっていいわがありません。国土保全・水源涵養・自然環境の保全、伝統文化の維持ということも国の基本として大事ではないかと思っています。
 今後とも、山村振興のため尽力していきたいと思います。

挨拶いただい来賓以外の来賓として、次の者が紹介された。(敬称省略)
    農林水産省農村振興局地域振興課長         松本 雅夫
    農林水産省農村振興局地域振興課課長補佐      三重野 信
    国土交通省国土政策局地方振興課長         安藤 恒次
    国土交通省国土政策局地方振興課係長        渡邉 真之
    総務省地域力創造グループ地域振興室課長補佐    柳澤 祐史
    林野庁森林利用課山村振興・緑化推進室長      木下  仁
    全国山村振興連盟常務理事兼事務局長        岸  廣昭
   

2.議事
(1)情勢報告(岸 全国山村振興連盟常務理事兼事務局長)
  山村振興関連予算・施策に関する要請活動等連盟の活動報告がなされた。

(2)国の施策説明
  農林水産省、林野庁、国土交通省及び総務省から説明があった。
 @ 農林水産省(松本 地域振興課長)
   「山村振興対策について」の資料に基づき、平成27年の山村振興法改正後
  の山村振興計画の作成状況、改正法に基づき措置された山村税制優遇措置(法
  人税・所得税の割増償却等)の内容、山村活性化支援交付金の活用実績、「農
  泊」の推進、ジビエ利用拡大等についての説明があった。

 A 林野庁(木下 山村振興・緑化推進室長)
   「森林資源を生かした山村振興対策について」の資料に基づき、森林資源を
  生かした山村振興のイメージ、森林資源の状況、森林整備を巡る課題(不在村
  化、経営意欲の低下)、林業の成長産業化と森林吸収源対策の推進、新たな森
  林整備対策と森林環境税(仮称)、林地台帳の整備、森林吸収源対策の交付税
  措置等について説明があった。

 B 国土交通省(安藤 地方振興課長)
   「国土交通省の山村振興対策」の資料に基づき、「小さな拠点」の形成推進
  、地域の創意工夫の場となる「道の駅」(重点「道の駅」モデル「道の駅」)
  、地域公共交通確保維持改善事業、自家用車を用いた有償旅客運送の弾力化、
  空き家対策総合支援事業等について説明があった。

 C 総務省(柳澤 地域振興室課長補佐)
   「地域自立応援施策について」の資料に基づき、チャレンジふるさとワーク
  、「定住自立圏構想の推進」、地方への移住・交流の推進、地域おこし協力隊
  など外部人材の活用、子ども農山漁村交流プロジェクト、過疎法による過疎対
  策について、地域運営組織の形成等について説明があった。

3.事例発表
「浅間山北麓ジオパーク推進活動について」
(1)地域づくりのための浅間山北麓ジオパークの活動
発表者  嬬恋村地域おこし協力隊員 坂口  豪

   平成28年4月から地域おこし協力隊員として着任。
平成28年9月に日本ジオパークとして認定された「浅間山北麓ジオパーク」
の事務局においてジオパーク専門員として活動。

 ジオパークとは、「地球・大地(ジオ:Geo)」と「公園(パーク:Park)」とを組み合わせた言葉で、「大地の公園」を意味する。
   素材の三要素→「大地」「動植物・生態系」「歴史・伝統・文化」
   活動の三要素→「保護」「教育」「ジオツーリズム」
 日本ジオパークネットワーク(JGN)に加盟申請し、日本ジオパーク委員会(JGC)が認定すると、JGNの正会員となり、ジオパークと名乗れる。2016年11月30日現在、日本ジオパークは43地域。

 浅間山北麓ジオパークのエリアは、嬬恋村吾妻川右岸と長野原町全域。
全体テーマは、「浅間山とともに未来へ〜破壊と再生がつなぐ人々の営み」としている。1783年の浅間山大噴火による災害(破壊)、嬬恋高原キャベツ、浅間高原牧場、浅間高原の別荘地(以上、再生)等浅間山と人々の営みがある。 6エリアに38のジオサイトがある。「ジオ」に関わるもの(鬼押出し溶岩等)、「エコ」に関わるもの(嬬恋高原キャベツ畑等)、「ヒト」に関わるもの(百体観音等)。
 山村振興とジオパークの関係性は、43地域の多くは過疎地域、それぞれの地域では魅力的な地域資源が点在する。それはジオ、エコ、ヒト等さまざま。地域資源をストーリーとして地域づくりにいかすことが地域振興につながる。
 ジオパークの活動には、次のようなものがある。
  まもる→(保護活動)浅間山溶岩樹型の内部清掃等
  まなぶ(教育活動)→中学生対象村内ツアー等
  いかす(地域の魅力を伝え、体験を促す活動)→嬬恋高原キャベツの収穫体験、
  ジオパーク商品の開発(ジオまんじゅう、キャベツチップス等)等

 ジオパークの効果としては、・地域の資源と資源の結びつき、・人と人との新たな結びつき、・世代と世代との間の結びつき、・地域内外からの人びとの交流活発化、・次世代(子ども)への地域資源の重要性の啓発といったものがある。

(2) 私の好きな妻恋つまごい
発表者  嬬恋村地域おこし協力隊員 荒井 西夏
   平成28年4月から地域おこし協力隊員として着任。
  「移住・集落支援室」を拠点に、移住体験ツアーなど移住定住の促進
   に取り組むほか、ジオパークの推進活動にも携わる。

 好きなのは、○山登り、○温泉(鹿沢温泉)、○いきもの(ミツバオーエン、ニホンカモシカ、きのこ)で、Geoに結びつくもの。
 活動としては、ジオパークモニターツアーの企画・運営で、その内容は次のとおり。
   ・2017年 2月12日 (日) 「スノーシュージオツアー」
   ・2017年 6月17日 (土) 「レンゲツツジ咲く百体観音ロングトレイル」
   ・2017年 7月26日 (水) 「黒斑山登山」
   ・2017年10月22日  (日) 「紅葉の吾妻峡散策」(予定)
   ・2018年 2月18日 (日) 「浅間園スノーシュー」(予定)
  「浅間山北麓ジオパークへようこそ!」と題したバーチャルジオツアーが放映された。

4.次回開催県挨拶
 次回開催県は栃木県と決定され、同県支部長 古口達也 茂木町長から挨拶があった。

5.現地視察
 嬬恋村に所在する次の場所を視察した。
(1) 群馬県農業技術センター高冷地野菜研究センター
  嬬恋村高原キャベツの連作障害の解決、キャベツセル苗の栽培技術の確立、ベ
  ニバナインゲンの栽培技術の確立等の研究を行っている。
  また、原料の特徴を活かした醸造酢開発(キャベツ酢(白と赤))、ブルーベ
  リー酢、イチゴ酢)、産地とキャベツ利用企業(餃子製造)との交流等を行っ
  ている。

(2) 愛妻の丘
  日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の際、妻の弟橘姫おとたちばなひめを偲び嬬恋の地
  で『吾妻はや(わが妻よ)』と三度嘆いたことから嬬恋村と名付けられたと
  されており、この由来から「愛妻家の聖地」と位置付けて村の活性化に取り
  組んでいる。「愛妻の丘」は、雄大な浅間山に向かって、日頃、妻には言え
  ない「愛してる」を叫ぶ丘。毎年9月には「キャベツ畑の中心で妻に愛を叫
  ぶ(通称:キャベチュー)」を開催(今年は12回目)。

(3) 鬼押出し園
  浅間山北麓ジオパークの鬼押出しエリアの拠点施設。
 天明3年(1783年)の浅間山噴火の際に流れ出た膨大な安山岩溶岩が風化して
 形成された奇勝を観察できる公園。「鬼押出し溶岩」は、噴火でできた火砕丘
 が崩れ再流動し、流下して形成されたもので、群馬県の岩石となっている
 (2016年選定)。



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