平成31年度山村振興関連予算・施策に関する要望書


 山村地域の振興につきましては、日頃から格別の御配慮を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、近年、山村を取り巻く環境は、道路、情報通信、生活環境等の整備水準が依然として低位な状況にあるほか、耕作放棄地の増大、鳥獣被害の多発に直面する中で、厳しさを増しており、過疎・高齢化の進展により集落機能の衰退が進んでおります。
 我が国の山村は、日本人としての精神の原点として我が国を支えてきた力の源であり、水資源、エネルギー資源を守り、国土保全、都市住民のいこいの場、若者の教育の場の提供等、多面的・公益的機能の発揮に重要な役割を担ってまいりました。このような国民の共有の宝とでも言うべき山村は、国土の約5割にも及んでおり、そこを人口のわずか3パ−セントの住民が守っているものの、その山村が集落機能の崩壊等により存続の危機に瀕していると言っても過言ではない状況にあります。
 こうした中で山村振興法により明確に示されている、上記の多面的、公益的機能の一層の充実を更に図ることが重要であり、このため、山村住民の定住と集落維持により、山村の活性化、自立的発展を図っていくことが、一極集中を是正した地方創生の目指すところであり、ひいては、我が国全体の発展につながるものと言えます。
 国におかれては、以上の認識の下に、山村振興を国の重要課題に据えて、下記の事項の実現を図っていただくよう強く要望致します。


T 熊本地震、東日本大震災等の復旧・復興
 1.熊本地震、東日本大震災については、関係省庁連携のもと、被害が生じた山村地域
  における復旧・復興対策を早急かつ強力に推進すること。特に東日本大震災について
  は、原発事故放射性物質の除染等を早急に行うとともに、放射性物質の影響を大きく
  受けている特用林産物栽培農家対策に万全を期すこと。
 2.近年、気候変動等により、多発、大規模化している災害に対処するため、国土強靭
  化対策を推進し、災害に強い山村づくりに取り組むこと。また、災害発生時の的確な
  情報提供システムの整備を図ること。
U 山村振興対策の総合的・計画的推進
 1.山村振興計画に基づき、関係省庁の一層の連携強化のもと、山村振興対策を総合
  的かつ計画的に推進すること。
 2.山村地域における農林水産業等地域の基幹産業の振興、生活環境の向上等を図る
  ための施設の整備等の取り組みに対する助成措置の充実・強化を図るとともに、自
  立的な地域活性化を支える人材育成への支援に取り組むこと。
 3.山村地域の活性化を図るために不可欠な辺地対策事業債及び過疎対策事業債の十
  分な確保を図ること
 4.農山漁村地域整備交付金の充実・強化を図るとともに、農山漁村地域活性化対策、
  森林・林業振興対策に係る地方財政措置の充実・強化を図ること。

V 多面的・公益的機能の持続的発揮
 1.山村の果たしている重要な役割や木の文化について、児童生徒を含め国民一般の
  理解を深めるための教育・啓発・普及対策の充実・強化を図ること。
 2.森林が二酸化炭素吸収源として大きな役割を担うことを踏まえ、計画的な間伐等の
  森林施業とこれと一体的となった森林作業道の開設を直接支援する「森林環境保全直
  接支援事業」の充実・強化を図ること。また、森林所有者等による計画的な森林施業
  が適切に行われることを確保するため、「森林整備地域活動支援交付金「森林整備地
  域活動支援交付金(林業・木材産業成長産業化促進対策)」の充実・強化を図るこ」
  の充実・強化を図ること。
 3.国土保全や生活環境整備を図るため、治山、治水及び砂防対策の充実・強化を図
  ること。また、水源のかん養、自然環境の保全等国土保全に資する事業を対象とした
  「国土保全対策」に係る地方財政措置の継続を図ること。
 4.景観対策、国土保全に資するため、松くい虫対策、ナラ枯れ対策について適切に行
  うこと。
 5.山村地域に期待される森林吸収源対策を強力に推進するため、森林環境税(仮称)
  及び森林 環境譲与税(仮称)を創設し、地方税財源の確保・充実を図るとともに、
  森林整備事業予算の確保を図ること。併せて、森林経営管理法に基づき小規模林地
  の集約化及び所有者の不明確な林地における市町村等の公的主体や意欲と能力のあ
  る経営主体の森林管理を積極的に推進するため、地域の実情に応じた運用ができる
  ものとすること。
 6.持続的な林業経営の実現、森林の多面的機能の発揮を図る上で不可欠な地域の森
  づくりを主体的に先導する人材の育成確保を図ること。
W 山村地域の活性化
 1.山村地域における農林水産業の維持・活性化を図るため、「中山間地域等直接支
  払交付金」、「多面的機能支払交付金」の充実・強化及び荒廃農地等の利活用対
  策の推進のため、「荒廃農地等
 利活用促進交付金」の確保を図ること。 
 2.山村地域の活性化と地域コミュニティーの再生のため、農泊推進対策、山村活性化
  支援交付金、都市農村共生・対流対策の拡充をめざし、「農山漁村振興交付金」の大
  幅拡大を図るとともに、「森林・山村多面的機能発揮対策交付金」及び「強い農業づ
  くり交付金」の充実・強化を図ること。
   また、中山間地農業ルネッサンス事業の拡大を図り、山村地域に対して優先的に予
  算配分を行うとともに、山村地域を優遇する等、山村地域にとって使い勝手の良い制
  度とすること。
 3.振興山村における地域資源を活用する製造業及び農林水産物販売業に供する機械・
  施設の取得に係る割増償却制度等については、適用期限を延長すること。 
 4.山村に存する棚田・里山林等の美しい景観の価値を見直し、その保存・再生を図る
  こと。
 5.侵入竹の駆除及び竹材等の利用推進を図ること。

X 産業の振興、地域資源の活用
 1.山村地域の発展には、地域資源を活用した産業振興と雇用の場の確保が不可欠で
  あり、農林水産業の振興と併せて6次産業化の推進を図るとともに、森林資源、農
  地等の土地資源、優れた環境等を活用した新たな農林業の振興更には、平場とは異
  なる山村の条件を生かしたAIを活用した園芸等の農業の振興、関連企業の立地・
  導入等の対策を充実・強化すること。
 2.本格的な利用期を迎えた森林資源を循環利用することにより林業の成長産業化を
  実現し、地域振興を図るため、「林業・木材産業成長産業化促進対策」により川上
  から川下に至る林業、木材産業の振興対策の拡充強化を総合的に図ること。
 3.急傾斜地における架線集材・ヘリ集材を含め、現場の実情に即した間伐などの森
  林施業を推進するほか、施業の低コスト化、再造林対策の強化を図ること。
 4.林業・木材産業、農業等山村地域における産業の担い手の育成確保対策の拡充・
  強化を図ること。
 5.木材価格の安定化を図るとともに、「木材需要の創出・木材産業活性化対策」等
  で進められている、公共建築物、公共土木分野等における国産材活用の推進、鉄筋
  ・鉄骨造構造からCLT 等新たな木質材を活用した木造構造への転換の推進、地
  域のA材活用のための伝統的な日本の木造家屋の良さの啓発と普及、木質バイオマ
  スの利用の取組みの促進、地域材の安定供給体制の確立や森林認証材の普及を図る
  ため、予算措置の充実・強化を図ること。また、木質建築部材の開発・標準化、木
  材・木製品の輸出促進等により木材の利用促進を支援する制度を充実・ 強化する
  こと。
 6.木質バイオマス産業化を促進するための施設整備、システム開発を図ること。
  また、農山漁 村における再生可能エネルギー導入の促進を図る取組み、発生した
  電力を適正な価格で買い取るシステムの構築を図る取り組み等の対策の充実・強化
  、それらの取組みを地域経済の発展に寄与させる仕組みの導入、風力発電を含めて
  地方自治体が条件不利地での取り組みへのフィットと併せての助成措置を図るとと
  もに、再生可能エネルギーでの発電比率の向上と、発生した 電力の送電システム
  の整備を図ること。
 7.特用林産物の振興を図るため、「特用林産振興総合対策事業」の予算確保を図る
  こと。
Y TPPについて
  TPP合意及びFTA等の貿易交渉等については、山村地域の主要産業である農林業に打撃を与える可能性があり、山村地域の住民が誇りを持って農林業を営んでいけるよう十分な配慮を行い、山村地域住民が生活を維持できるよう、万全の対策を講じること。

Z 鳥獣被害防止
 1.鳥獣被害問題については、保護対策に偏ることなく、被害対策とのバランスを図る
  とともに、被害対策に必要な財源を確保すること。また、地域ぐるみの総合対策を推
  進する「鳥獣被害防止総合対策交付金」及び広域的な森林被害等に対応する「シカに
  よる森林被害緊急対策事業」につ いて事業継続するとともにメニューの充実・強化
  を図ること。
 2.鳥獣被害防止特別措置法等に基づき、被害軽減の技術普及を行うなど、地域ぐるみ
  の総合対策を推進するなど、鳥獣被害対策の一層の充実・強化を図ること。
 3.鳥獣被害対策実施隊の設置促進、猟友会等の民間団体の参加促進、林業分野・関係
  省庁との連携を促進するとともに被害の深刻さの度合いによっては、防衛省・自衛隊
  は関係省庁と連携して、協力の可能性を検討すること。
 4.捕獲鳥獣の加工処理施設の設置促進、焼却対策の充実・強化を図るとともに、ジビ
  エ振興対策を講ずること。
 5.今後、ICTやドローン等を活用し、より効果的な鳥獣被害対策に努めること。

[ 山村と都市との共生・対流
 1.グリーン・ツーリズムの一層の普及を行うとともに、地域ぐるみで行う受入体制や
  交流空間の整備及びNPO法人等の多様な取組主体の育成等グリーン・ツーリズムの
  総合的な推進を図ること。
 2.自然資源の保護・保全をするとともに、地域資源を生かした教育、ふるさとに愛着
  と誇りを育む活動である地方自治体の行うジオパーク推進の事業に対する支援を充実
  ・強化すること。
 3.山村における国民の幅広いボランティア活動を促進するための対策の充実・強化を
  図ること。
 4.大学生を含め学校教育・社会教育において自然豊かな山村での体験活動を推進する
  こと。
 3.山村地域へのUJIターン者の定住促進、高齢者の地域社会の活動に参加できる機
  会の確保、都市との連携強化による山村の活性化の取り組みの充実・強化を図るこ
  と。

\ 道路、情報通信基盤の整備
 1.山村地域の産業、生活基盤として不可欠な高規格幹線道路、地域高規格道路、一般
  国道及び都道府県道の整備、特に、二県以上に跨がる県管理の国道整備は、山村地域
  の振興に大きく寄与ているにもかかわらず、冬期閉鎖期間が長期間に及ぶことにより
  関係振興山村の発展を大きく阻害しており、こうした県際道路の整備計画を策定の上
  、計画的に整備促進を図るとともに市町村道の改良・舗装等、立ち遅れている山村地
  域の道路整備を促進すること。また、基幹的な幹線市町村道路の整備の都道府県代行
  に対する助成措置を講ずること。2.道路整備のための財源を十分に確保し、特に、
  地方における道路財源の充実を図ること。
 3.携帯電話不通地域の解消、インターネットのブロードバンド接続可能地域の拡大、
  高速光ファイバー網の整備等デジタルディバイドの解消を図るための高度情報ネッ
  トワークその他通信体系の充実・強化を図ること。また、地域の実情に即した通信
  システムの助成を図るとともに、これら通信網の維持のためのランニングコストの助
  成を行うこと。
 4.ラジオ難聴取地区の解消を図ること。
 5.防災上並びに観光景観上の観点から無電柱化の推進に当たり、一定の財政措置
  (過疎債)を講ずること。

] 生活環境の整備
 1.山村地域住民の生活交通を確保するため、地方バス路線維持やデマンドバスの導
  入・運行対策の充実・強化を図ること。
 2.山村の簡易水道等施設の整備促進を図ること。
 3.山村地域の実情に応じて汚水処理施設の整備促進を図ること。
 4.廃棄物処理施設の整備を推進するため、助成措置を講ずること。また、廃棄物処理
  施設の解体に対しては、適切な措置を講ずること。
 5.防力の充実を図るため、消防庁舎・消防施設等の整備及び改修に対する助成措置を
  講ずること。

]T 医療・保健・福祉
 1.山村地域の産科医、小児科医を含めた医師の確保に万全を期すこと。へき地診療
  所等の運営、医療施設・保健衛生施設の整備、医師及び看護師の養成・確保に対す
  る助成措置の充実・強化を図ること。
 2.無医地区への定期的な巡回診療、保健師の配置、救急医療用のヘリコプターの拡
  充を図ること。
 3.へき地保育所の運営、高齢者等の社会福祉施設整備、社会福祉関係職員等の養
  成・確保に対する助成措置の充実・強化を図ること。
 4.山村における障がい者施設の整備について、十分な予算の確保を図ること。
 5.医療、保健、介護、福祉の充実、高齢者の職場、住居の確保は、その地域に居住す
  る高齢者のみならず、都市の団塊世代の山村地域への定住に不可欠であり、都市部
  との連携の下に、このような観点からの充実・強化を図ること。

]U 教育・文化
 1.公立学校施設整備、スクールバス等の購入に対する助成措置を講ずること。
 2.寄宿舎居住費等へき地児童生徒に対する助成措置を講ずること。
 3.山村地域の文化財の保護等に対する助成措置を講ずることと同時に遺跡発掘体験
  等により山村の自然に触れる体験交流活動に対する支援措置を講ずること。
 4.地域の伝統文化・芸能の体験等を通じた子供の育成に努めること。
 5.教育環境の整備は、都市部からの若者の定住に不可欠であり、その観点からの充
  実を図るとともに豊かな自然環境や伝統文化等を有する山村の特性を生かした教育
  の充実を図ること。
 6.小中学校の統廃合の推進に当たっては、地域活性化の観点に十分配慮すること。

]V 山村地域の自主性の確立
 1.財源保障機能及び財源調整機能を果たす地方交付税制度の充実・強化を図り、所
  要額を確保すること。
 2.基準財政需要額の算定に当たっては、山村自治体が人口割合に比べて広い面積を
  有し、国土保全、地球温暖化防止等に重要な役割を果たしていることを考慮し、面積
  要素を重視するなど、山村地域の実情に即したものとすること。
 3.独自の発想に基づく山村振興を助長するため、山村地域の自主性を尊重する助成
  措置、過疎地における足の確保の為の道路運送法の規制等規制緩和措置等の幅広
  い導入を図るとともに、木材のストックヤードの整備等地方創生のために必要な事業
  について、既存の予算で対応できない場合は、ハード事業も地方創生交付金の対象と
  すること。
 4.償却資産に係る固定資産税は、山村地域の市町村の重要な財源であり、仮に廃止、
  縮小されることがあれば山村地域の市町村の財政に多大なる支障を来すことを踏まえ
  、現行の課税対象、評価額の最低限度を堅持すること。
 5.道州制は絶対に導入しないこと。



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