21世紀の東京の森林整備のあり方と林業振興の方向
東京都農林漁業振興対策審議会

 

  

〜「環境の世紀」を担う森林の育成と森林産業の発展に向かって〜
 

 東京都は、昨年4月知事の諮問機関である東京都農林漁業振興対策審議会(会長:梶井功東京農工大名誉教授)に対して、「21世紀の東京の森林整備のあり方と林業振興の方向」について諮問したが、その答申が去る1月30日出された。
 答申は、「はじめに」において、その趣旨を次のように述べている。
 『21世紀は「環境の世紀」と言われている。科学万能、経済最優先で進んできた20世紀がもたらした地球温暖化や都市環境の悪化などにより、私たちの生活に危機が迫っている。持続性が危ぶまれている社会を、環境的にも経済的にも持続可能な社会に変えるという大きな課題に取り組むことが、21世紀を生きる私たち全てに求められている。
 東京は、世界屈指の「資源消費大国」日本の首都であり、大消費地の責務として、「環境の世紀」を担う施策について先導的に取り組むことが強く求められている。
 森林は、洪水や渇水の防止、土壌浸食の防止、気候緩和、保健休養、多様な生物の生息の場などの様々な役割を果たすことから、東京が持続的に発展するために不可欠な存在である。
 それは、古代エジプト文明、ギリシャのミケーネ文明、古代ローマ文明など、森林を利用することで栄え、森林を切り尽くしたことで滅んでいった都市文明の歴史を顧みても明らかである。
 また、森林は、二酸化炭素を吸収し、固定することで地球温暖化の抑制に貢献するという重要な役割を果たしていることが認識されてきた。さらに、資源としての木材は、鉄やアルミニウムなどに比べて生産や加工に要するエネルギーが少なく、植林や保育などの森林整備を行うことで繰り返し利用することが可能な優れた天然資源であることから、近年、再び重視されている。
 つまり、環境負荷の少ない社会への転換が求められている現代にとっては、森林の存在及ぴそこから供給される資源としての木材の利用が不可欠である。
 世界的に環境の悪化が深刻になる中で、「環境の世紀」と言われる今だからこそ、長い歴史をかけて再生可能な森林資源を利用するシステムを確立してきた林業及び木材産業が果たす役割は大きい。しかしながら、現在、これらの産業は厳しい低迷の中にあり、その結果、管理放棄された森林の様々な機能の低下が日本各地で進んでいる。東京の森林についても、例外ではなく、森林の荒廃が進み、一部では、都民生活の安心・安全・やすらぎという二一ズに十分に応えることができない状況にある。
 このような中、将来世代までもが安心して暮らせる首都東京を実現させるためには、健全な森林を育成すると同時に、環境負荷が少なく、再生可能な森林資源を有効に活用する新たなしくみづくりに社会全体で取り組むことが不可欠である。
 これらの実現には、森林とこれに関わる産業が、これまでの「林業」よりもさらに広い視野に立ち、木質資源の循環利用、木質バイオマスのエネルギー利用、教育や癒しの場としての森林の空間的活用など、森林の多様な働きを活かした「森林産業」として大きく生まれ変わることが必要である。
 この答申は、21世紀が持続可能な社会となるために重要な役割を担う森林と森林をステージとした新しい産業の創出に関し、首都東京が果たすべき役割について、提言するものである。』大都市東京が、森林整備のあり方等について審議・検討されたことは、今後の山村の森林整備・林業の振興について都市の自治体、都市住民に理解と協力を求めていく上で非常に有意義なことと考えられる。

【答申の概要】
◆ 基本的な考え方

 

○大消費国の首都である東京は、率先して環境負荷の少ない社会に転換していくべき。
○健全な森林の育成と森林資源の持続的利用に、社会全体で取り組むことが不可欠。
○「林業」から「森林産業」に発展させていくことが必要である。
  
◆ 21世紀に求められる都市と森林のあり方

○資源の大量消費から循環利用への転換
○化石燃料の使用を削減する木質バイオマスの利用
○人工林を生産林と保全林に区分、整備
○観光・医療・福祉など新たな森林利用の実現
○都民全体で森林を育てる社会の実現

↓そのために

◆ 健全な森林の育成と森林産業の発展
○森を育てる 〜首都東京を支える森づくりの転換〜
◇東京都独自のゾーニングとそれに応じた森林整備の実施
・生産型、環境保全型、都市緑地型に区分、整備
◇森林管理のための責務と費用負担
・森林所有者の責務の明確化と最低管理水準の設定
・税負担や基金の創設、宝くじ、排出権取引などの検討
○森を活かす 〜森林をステージとした「森林産業」の創出〜
◇地域材利用の推進
・「認証制度」の確立
・公共事業や学校、公園などでの積極的利用
◇木質バイオマスのエネルギー利用
・産学公連携によるバイオマスエネルギー産業の育成
・市町村との連携による地域モデルの実現
◇新たな森林活用の創出
・観光、教育、医療・福祉分野での森林活用
○人を育てる 〜森林の育成と森林産業の発展を支える人々の育成〜
◇森林管理技術者、サポーターなどの育成
・公的支援制度による森林管理技術者の育成など
◇優れた技術者の認定
・「森の匠」「木の匠」の認定
◇NPO・企業との協働
・「大自然塾」の展開、企業参加の森づくりなど
◎東京都は、今後、本答申を反映させた「(仮称)森林づくり推進プラン」を策定します。(7月頃予定)
*森林産業とは

・持続的利用が可能な木材の生産
・再生可能で環境負荷の低い木質資源の利用(非木質資源からの転換)
・化石燃料の代替エネルギーとしての木質バイオマス利用
・森林の多様な働きの観光、教育、医療・福祉分野への活用など

 

□問い合わせ先(林業関係)  電話:直通03-5320-4860
               東京都産業労働局農林水産部林務課

  

  

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