「後藤 新 群馬県出納長からの歓迎挨拶」

 ご紹介をいただきました群馬県の知事をしております小寺弘之でございますが、本日は、前橋でも別の全国の大会が開催をされております。
 公務がかさなりましたので、私、群馬県の出納長をしております後藤新と申しますが、知事に代りまして皆様方に歓迎のご挨拶を申し上げたいと存じます。第30回の全国山村振興シンポジウムに全国の各地からお出でいただきましてありがとうございます。心から歓迎を申し上げます。
 あいにく、台風の影響もあって九州や四国の方で来られない方、あるいは遅れていらっしゃる方もいるとお伺いしております。雨模様で皆様をお迎えするには絶好の日よりとはいきませんが、しかし、自然は本物の自然でありますし、それから今話題の温泉も、ここは本物の温泉であります。安心して温泉を楽しんでいただければと思います。
 群馬県は、紅葉の季節にはまだ少し早く、まだ皆さん方に紅葉を楽しんでもらえるという時期にはなっておりませんけれども、今日のこの会場の外の様子でも分かりますように、地元のもてなしの心、そして群馬県あげてのもてなしの心で全国各地からのお客様をお迎えしたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願い致します。
 今日は、午前中、群馬県が200万人を達成した記念でつくりました映画『眠る男』をご覧になっていただいたということをお聞きしております。
 200万人を達成して今203万人の人口になっておりますが、これを記念して、なにか県民の心に残る、そしてこれからも県民の精神的な支えになるような、そんないわば、無形のモニュメントをつくれないかというようなことで、地元前橋出身の小栗康平監督にお願いを致しました。
 小栗監督は『泥の河』という映画でデビューをされた方でありますが、作品の数が少ない寡作の監督であります。その方の4作目がこの『眠る男』ということになります。
 ご覧いただいた方は、印象としてどんな印象を持たれたか、是非お聞きしたいところでございますけれど、一般的に言いますと、分かり易いか、分かりくいかという分類で言うと、決して分かり易い映画ではないというふうに思います。それだけに想像力の余地を残せる、皆さんがいろいろあれこれと想像をして楽しんでいただける、その画面や風景の背後にあるもの、あるいは台詞の背後にあるもの、そういうものをそれぞれが感じていただける、考えていただけるそんな映画ではないかというふうに思っております。
 モントリオールの世界映画祭でも審査員の特別大賞をいただきました。群馬県にとってもこれからも大切にしていかないといけない映画だと思います。
 このあとも講演を1時間ほど小栗監督にしていただけるということで、私自身も楽しみにしておるところでございます。
 さて、今日は山村振興ということでそれぞれのテーマでこれからお話がありますし、またパネルディスカッションもすばらしい顔ぶれをお迎え致しまして開催されます。
 私どもの小寺知事は常々、これから農山村への回帰、農山村へ戻っていく、そういう時代が来るということを申しております。
 私もつい最近、それを実感するようなことに出会いました。
 私は先週も、実はこちらの利根、そして水上の方へ参ったわけですけれども、「ねんりんピック」という大会が行われました。全国の高齢者の健康福祉、スポーツ、文化の祭典で、全国から1万人の選手をお迎えして、第17回目の全国大会がこの群馬県の各地で行われました。
 その関係でこちらに参った時に、こちらの大きなホテルの従業員さんからお聞きした話でありますけれども、若い女性でありました。
 東京の企業でOLをしていて、4年前からこちらへ来ているということで、そこでお客様の接待係をされている女性でした。東京の企業は皆さんがお聞きになれば誰でも知っているような大企業であります。
 給料は随分安くなったでしょうと言うと、『給料は随分安くなりました。ただ、東京ほど使う機会もないし、使うものもない。東京は、都市は、皆さんご承知のように消費の文化でありますから、お店も多いわけですけれども、こちらはそういうふうに使う機会もないし、入るほうは少なくなりましたけれども出るほうもそんなにいらないし、実に楽しい。こっちへ来たのは自分の意思で来ました。』
 もったいないと言われたんじゃないですか?『もったいないと言われました。でも東京のOL時代、自分が終業時間が近づくと時計を見ながらあと30分で仕事が終わる、あと15分で解放される、あと5分で帰れる、だから帰り支度を始める、そして終わったということで職場から出て行く、そういう退屈な、いわば自分の時間の切り売りをしているようなそんな毎日からは開放され、今はとっても幸せだと思う。こちらに来ると自然に囲まれ、そして東京は人が多いけれど人と人との繋がりが非常に薄い、こちらに来ると人の数は少ないけれど人と人との繋がり、そういうものを自分は非常に幸せだと思う、そうこうして4年が過ぎた。』ということで、大変まだ若い女性でしたけれども充実した顔をされていました。
 確実に、私も世の中はこれから少しずつではありますけれども変わってきているというふうに思います。
 我々が今までの経済成長、都市への集中現象の中で失ってきたものを取り戻そうとする動き、そういうものが出てきているというふうに思っています。
 働くということの意味についてもう一度考え直そう、そういう次の時代を担う若い人たちが育ってきている。働くことということの意味については『眠る男』の中にも出てくると思います。働くということはいったいどういうことなのだろうか、人間が生きて死んでいくというのはどういうことなのだろうか、そういう問いかけのある映画だと思いますが、そして働くことの意味を問い直す、そういうものが出てきています。
 しかしそのためには、彼女がその大きなホテルに勤めているように、働く場所も必要であります。産業、そして経済の基盤が、やはり我々の毎日の暮らしの礎をなしております。
 今回のテーマの“自立と持続”ということもそのことと深く関係をしております。この山村地域でどうしたら自立と持続の基盤が築けるか、そこをみんなで一緒になって真剣に考えていかなければいけない。そして、その上で心豊かな暮らしが実現できるようにしていかなければならない。そういう時代だろうと思います。どうぞこの大会がそうしたことへの重要な契機となりますことを心から願っております。そして皆様方おひとりおひとりが、また、それぞれの地域に戻って、今日のこのシンポジウムで得られたことをひとつの火種にして、そしてその火種が広がっていくようなそういう活動をそれぞれの立場で続けていかれることを心から願っております。
 遠く、この群馬県、上州のそして利根村という地域まで足を運んでいただいたことに心からの御礼と感謝を申し上げます。有意義なシンポジウムになることを念願致しまして知事に代わりましての歓迎のご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。