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【「環境を守る健全な森林は国民のもの」 長野県栄村長  橋 彦芳 】
 私は振興山村の立場から「地球温暖化」の性格、山村地域とその森林の状況について申し上げ、造林事業の本質と健全な森林の育成管理が国民の最大利益であることから、各々が環境税として応分の負担を通じて地球温暖化を抑制し、良好な生活環境を再生するために国は国家的プロジュクトとして取り組むべきことを訴えるものであります。
 まず、私は「地球温暖化」の性格について共通の認識が必要だと思います。
 地球温暖化は言うまでもなく単なる自然現象ではないということです。先進諸国が20世紀の後半に生み出した大量生産、大量消費の産業経済政策がその原因であります。しかしながら経済成長のためには「必要悪」として見過ごされる風潮が依然として続いております。このことについて深い反省を致し、あらゆる分野で是正の努力をしない限り温暖化の抑制は不可能であります。
 第二に振興山村の経緯と現状について申し上げます。山村振興法は昭和40年の経済成長期に国土の均衡ある発展を目指して特定地域振興の法として議員立法で成立しました。
 林野率75%以上、1ha当たり人口密度1.16人未満の振興山村地域は2,104自治体、面積は1,785万ha、国土の47%でありました。しかし、昭和、平成の市町村合併により地域は現存するが、単独の自治体として残る地域は平成17年度末には700余りになると予測されています。このことについて改めて深い危機感を持つものであります。振興山村地域は、これまでの努力にかかわらず深刻な過疎、少子高齢化問題を抱え森林の整備と管理に苦慮しているからであります。森林整備の遅れから林内の下層植生が衰退しているところへ集中豪雨等の自然災害が多発する今日、復旧に暇がないほど山林被害が広がっており、従って、広大な森林を抱えながらも温室効果ガスの吸収能力が低下しているのが現状であります。
 第三は、造林事業に対する財政投資の拡大であります。今までの造林事業費規模では、温室効果ガスの森林吸収率3.9%を目指す「森林・林業基本計画」の達成が危ぶまれるとして、林野庁は平成19年から24年の追加的事業費を2,200億円必要であるとしております。しかし、なお、全公共事業費の1%に満たない額だと言われております。
 公共事業費における各省間及び省庁内の各分野におけるシェアについて伝統的固定を止めて造林事業費の抜本的な拡大を図ることが温暖化を抑制し、国民の良好な生活環境を保持する真の改革だと信ずるものであります。
 第四は、造林事業は定住型産業であるということであります。造林は木を植え、下刈をして、徐伐、枝打ち、間伐、伐採に至る一連の技能的作業であります。山下に住み地の利を良くわきまえた者によって最も良く為し遂げ得るのが定住型産業の本質であります。
 即ち、地域森林組合等の地場林業経営体が中核となるのが理想であります。しかしながら国産材市況の低迷、地元自治体の財政難あるいは単発的な請負競争等によって造林事業の縮少、作業員の解雇等が各地に見られるのは誠に遺憾であります。造林事業の係る性格から国・県・市町村と地域造林経営体との相互信頼を確立し、補助・交付金の自由度を高め森林造成の飛躍的振興を図り、振興山村地域の活性化を図ることが温暖化抑制に最も貢献できる道であります。
 第五は川上と川下、都市と農山村の交流の促進であります。都市の若者は予想以上に農山村、ことに森林作業に魅力を持っています。「私たちはブロイラーではない。蛍光灯の下でいつまでも働くより、日が暮れたら家に帰る健全な暮らしを求めている」と言うのです。 私は、これこそ「地球温暖化抑制の小さな波動」ではないかと思います。都市の若者が山村に移住し都市と農山村の理解と交流が促進するような一大施策を講ずることが極めて有意義であることを訴えたいと思います。
 最後に、環境税の創設は、冒頭に申し上げましたように地球温暖化の性格から自然再生への国民的連帯の象徴として今度こそ実現できるものにすべきであります。その上で温暖化ガスの抑制対策は京都議定書の国際的約束を果たすための国家プロジュクトとして取り組まれることを重ねて要望するしだいであります。
 以上、私の意見を申し上げましたが、皆様のご理解とご賛同をいただきますようお願いしまして終わります。ありがとうございました。