政府は、7月7日の閣議において、経済財政諮問会議から答申された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2006」を決定した。
 今回の基本方針は、成長力・競争力を強化する取組、財政健全化への取組、安全・安心の確保と柔軟で多様な社会の実現を柱としている。
 財政健全化の取組においては、「財政健全化第U期(2007年度〜2010年代初頭)においては、財政健全化の第一歩である基礎的財政収支黒字化を確実に実現する」としている。また、財政健全化に当たっては、名目経済成長率3%程度の堅実な前提に基づいて、必要な改革を行うとしており、2011年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化するために必要となる対応額(歳出削減又は歳入増が必要な額)を16.5兆円程度と試算している。
 山村地域に係るものとしては、都市と農山漁村の共生・対流の推進、「立ち上がる農山漁村」の取組の推進等による農山漁村の活性化、京都議定書を実現するための森林の整備・保全等森林吸収源対策の取組の加速、林業・木材産業の再生、農地・農業用水等の食料供給力維持・向上、財政健全化を進めるための地方財政への取組み等いくつかの事項が盛り込まれている。

 「基本方針 2006」の全体構成及び山村地域に特に関係する部分は、次のようになっている。

◎ 「基本方針 2006」の全体構成
第1章 日本経済の現状と今後の課題
1.「新たな挑戦の10年」へ
2.「基本方針2006」の課題
第2章 成長力・競争力を強化する取組
1. 経済成長戦略大綱の推進による成長力の強化
(1) 国際競争力の強化
(2) 生産性の向上(ITとサービス産業の革新)
(3) 地域・中小企業の活性化(地域活性化戦略)
(4) 改革の断行による新たな需要の創出
(5) 生産性向上型の5つの制度インフラ
2. 民の力を引き出す制度とルールの改革
(1) 規制改革
(2) 市場活力や信頼の維持と向上
(3) 公を支えるシステム改革
第3章 財政健全化への取組
1. 歳出・歳入一体改革に向けた取組
(1) 歳出・歳入一体改革の基本的考え方
(2) 財政健全化の時間軸と目標
(3) 改革の原則と取組方針
(4) 第U期目標の達成に向けて
(5) 歳入改革
(6) 第V期における歳出・歳入一体改革
(7) 今後の取組
2. 「簡素で効率的な政府」への取組
第4章 安全・安心の確保と柔軟で多様な社会の実現
1. 社会保障制度の総合的改革
2. 再チャレンジ支援
(1) 人生の複線化による柔軟で多様な社会の仕組みの構築
(2) 個別の事情に応じた再チャレンジ支援
3. 総合的な少子化対策の推進
4. 生活におけるリスクへの対処
5. 豊かな生活に向けた環境整備
第5章 平成19年度予算における基本的考え方
1.今後の経済動向と当面の経済財政運営の考え方
2.平成19年度予算の方向

◎ 山村地域に特に関係する部分

第2章 成長力・競争力を強化する取組
1.経済成長戦略大綱の推進による成長力強化
(1)国際競争力の強化
@ 我が国の国際競争力の強化
・「21世紀新農政2006」に基づき、担い手への施策の集中化・重点化等により、経営構造の改革など国内農業の体質強化を図るとともに、農林水産物・食品の輸出促進や東南アジアを視野に入れた食品産業活性化のための取組支援策等の「攻めの農政」の視点に立った国際戦略を推進する。また、「森林・林業基本計画」を見直し、森林整備・保全と林業・木材産業の再生、国際競争力のある水産業への構造改革を推進する。
(3)地域・中小企業の活性化(地域活性化戦略)
@ 地域経営の活性化
・地域資源をいかした新技術開発、産業等の観光化、エコツーリズム、文化芸術スポーツの活用等による観光振興、コミュニティビジネス振興、地産地消等を進める。地域の中核事業の育成等、5年間で地方での1,000の新事業創出等を図る。
・地域性をいかした取組に必要な道路、港湾、地域公共交通等を戦略的に整備する。
・ひとづくり・雇用創出を図る地域再生計画の実現を省庁連携により支援する「地域の雇用再生プログラム(仮称)」を策定する。
・地域活性化に向けた「立ち上がる農山漁村」の取組の推進、都市と農山漁村の共生・対流の推進、食品産業と農業・漁業などの連携強化により、農山漁村を活性化する。
・公的サービスのコストを低減・質的向上させ、地域活性化を図るため、大都市居住者の地方への定住・二地域居住等の促進を国土形成計画に位置づける。
・5年間で4万件の新事業創出を目指す産業クラスター計画と知的クラスターを連携して推進するとともに、地域資源を活用したイノベーションを促進する。
・経済的社会的まとまりをもつ地域を単位とした総合的支援により活性化を図る。
就業率や就業満足度等を総合して「就業達成度」として政策遂行の指標とする。

第3章 財政健全化への取組
1. 歳出・歳入一体改革に向けた取組
(2) 財政健全化の時間軸と目標
小泉内閣の財政健全化(2001〜06年度)を第1期と位置付けた上で、第U期においては、財政健全化の第一歩である基礎的財政収支黒字化を確実に実現する。
第V期においては、持続可能な財政とすべく、債務残高GDP比の発散を止め、安定的にき下げることを確保する。
(3)第U期目標の達成に向けて
@ 財政健全化に当たっての考え方
・経済の見通しに関し、名目経済成長率3%程度の堅実な前提に基づいて、必要な改革措置を講ずることとする。
・この前提の下で、2011年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化するために必要となる対応額(歳出削減又は歳入増が必要な額)は、16.5兆円程度と試算される。
A 歳出改革
i 歳出改革に向けた基本姿勢
・機械的に歳出を一律に削減するという手法ではなく、制度的な見直しにまで立ち入った、徹底した歳出の見直しを行い、国民生活への影響も十分に吟味しつつ、メリハリのある歳出改革を行う。
ii 各分野における歳出改革の具体的内容

地方財政

国と地方の信頼関係を維持しつつ、国・地方それぞれの財政健全化を進めるため、地方財政について以下の取組みを行う。

地方歳出については、国の取組みと歩調を合わせて、国民・住民の視点に立って、その理解と納得が得られるよう削減に取組む。

(1)

地方公務員人件費については、国家公務員の改革を踏まえた取組みに加え、地方における民間給与水準への準拠の徹底、民間や国との比較の観点からの様々な批判に対する是正等の更なる削減努力を行い、本年4月末に総務省から公表された速報値を踏まえ、5年間で行政機関の国家公務員の定員純減(▲5.7%)と同程度の定員純減を行うことを含め大幅な人件費の削減を実現する。

(2)

地方単独事業については、「選択と集中」の視点に立って、国の取組みと歩調を合わせ、過去5年間の改革努力(5年間で▲5兆円超)を基本的に継続することとするが、地域の実情に配慮し、今後5年間については、地方単独事業全体として現在の水準以下に抑制することとし、投資的経費は国の公共事業と同じ改革努力を行い、一般行政経費は2006年度と同程度の水準とする。

ただし、これまでの歳出削減努力がデフレ状況下で行われてきたことなども踏まえ、地域の経済動向等を十分に注視しながら、柔軟かつ機動的な対応に心がけることとする。

以上の歳出削減努力等を踏まえ、地方交付税等については、以下の制度改革等を行う。

(1)

地方交付税の現行法定率は堅持する。

(2)

過去3年間、毎年1兆円近く削減してきた地方交付税等(一般会計ベース)について、地方に安心感を持って中期的に予見可能性のある財政運営を行ってもらえるよう、地方交付税の現行水準、地方の財政収支の状況、国の一般会計予算の状況、地方財源不足に係る最近10年間ほどの国による対応等を踏まえ、適切に対処する。

(3)

これにより、上記の歳出削減努力等とあわせ、安定的な財政運営に必要となる地方交付税(地方財政計画ベース)等の一般財源の総額を確保する。

(4)

各地方公共団体に対する地方交付税の配分に当たっては、行政改革に積極的に努力している団体や地方税収の伸びがあまり期待できない団体に特段の配慮を行う。

(5)

地方分権に向けて、関係法令の一括した見直し等により、国と地方の役割分担の見直しを進めるとともに、国の関与・国庫補助負担金の廃止・縮小等を図る。交付税について、地方団体の財政運営に支障が生じないよう必要な措置を講じつつ、算定の簡素化を図る。地方税について、国・地方の財政状況を踏まえつつ、交付税、補助金の見直しとあわせ、税源移譲を含めた税源配分の見直しを行うなど、一体的な検討を図る。
 以上の点を中心に住民の視点に立った地方公共団体の自発的な取組みが促進されるような制度改革を行う。そのため、再建法制等も適切に見直すとともに、情報開示の徹底、市場化テストの促進等について地方行革の新しい指針を策定する。
 また、道州制導入の検討を促進する。

農林水産(非公共)

現在農林水産分野全般にわたり進めつつある改革を今後とも緩みなく進めることが、「攻め」に向かう強靭な農林水産業を作り上げるための途である。こうしたことにより、農林水産関係予算については、関係制度全般にわたり、支援対象の重点化・施策の「選択と集中」の強化を図り、また、執行状況の反映を徹底し、これまで以上の改革努力を通じた節減合理化を図る。

その際、経済成長との関係を勘案したこれまでの実質の削減率の実績による対応を視野に入れる必要がある。

なお、農業の生産性向上等のため、非公共施策の推進が柔軟に図られるよう、必要に応じ、公共と非公共の間の彼我融通(シフト)を適切に活用することとする。

第3章 財政健全化への取組
2. 「簡素で効率的な政府」への取組
(不交付団体の拡大等)
・例えば人口20万人以上の市の半分などの目標を定めて、交付税に依存しない不交付団体の増加を目指す。また、地方団体の財政運営に支障が生じないよう必要な措置を講じつつ、簡素な新しい基準による交付税の算定を行うなど見直しを図る。

第4章 安全・安心の確保と柔軟で多様な社会の実現
2.再チャレンジ支援

(1)

人生の複線化による柔軟で多様な社会の実現
(暮らし方の複線化)
・団塊世代・若者等の農林漁業への就業支援、人材誘致・移住促進等の地域における人材受入れ体制の整備等U・Iターンを支援する。

4. 生活におけるリスクへの対処
・さらに、温暖化防止対策など、持続可能な社会の実現に向けて地球環境保全等に取り組む。
(安全性・信頼の再構築)
・国民への食料の安定供給を確保するため、農地・農業用水等の食料供給力の維持・向上を図る。また、環境保全型農業を推進する。
(地球環境の保全・循環型社会の構築)
・京都議定書の約束期間開始を2008年に控え、省エネ・新エネ対策、原子力の推進等による温室効果ガスの排出削減、森林の整備・保全等の森林吸収源対策等の取組を加速するとともに、京都メカニズムによるクレジットの取得を進め、またその適切な管理のための仕組みを平成18年度中に構築する。今後、「京都議定書目標達成計画」の実現を図るとともに、長期的な温室効果ガス排出削減に向けたリーダーシップを発揮する。不法投棄対策を含む循環型社会の構築、違法伐採対策等に取り組むとともに、「緑の雇用」も活用しつつ、自然環境の保全等により自然との共生を進める。

5.豊かな生活に向けた環境整備
・他者への思いやりや命を大切にする教育及び長期宿泊体験など体験活動の充実、学校、家庭、地域の教育力の強化、不登校や「キレる」言動への対応、発達障害を含む障害のある子どもへの教育的支援活動の取組を進める。


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