平成20年度全国山村振興連盟関東ブロック会議が、7月10日(木)〜11日(金)の二日間にわたり全国山村振興連盟長野県支部(支部長 小木曽亮一 根羽村長)の主催により長野県川上村において管内の会員、支部事務局等100余名が参加して開催された。
 会議は、地元長野県支部事務局大島俊二次長の司会により進められ、まず小木曽長野県支部長の主催者挨拶、開催地である川上村の藤原忠彦村長の歓迎挨拶があった。ついで、来賓として出席した農林水産省農村振興局農村政策課 谷本哲朗課長補佐、国土交通省都市・地域整備局地方振興課 逢坂真徳係長、総務省自治行政局地域振興室 武田直人総務事務官及び林野庁森林総合利用・山村振興室 原 修課長補佐から挨拶があり、続いて地元の長野県農政部農村政策課 北澤省吾課長から歓迎の挨拶があった。
 ついで、農村振興局中山間整備推進室 粂 望山村振興事業係長、関東農政局地域整備課の松井敏文山村振興係長及び佐藤公一農林水産技官、全国山村振興連盟 東 諄常務理事、全国町村会経済農林部 菅原 力副部長が紹介された。
 次に、議事に入り、先ず、山村振興対策に関する中央の情勢並びに連盟の活動状況等について、連盟東常務理事から「林野庁における山村再生に関する研究会に関すること、循環型社会形成のための木材利用についての緊急提言が宮路先生をはじめ山村に関係の深い先生が集まった議員連盟からなされたこと、連盟において7月4日に平成21年度山村振興関連施策の要望書をとりまとめ要望活動を行ったこと」等について報告が行われた。
 続いて、各県からの提出された要望事項について協議が行われ、提出支部の茨城県支部 佐川邦夫事務局長、群馬県支部 桑原光二課長補佐、山梨県支部 森田 守南部町副町長、長野県支部 斎藤 保栄村係長から説明がなされた後、農林水産省農村政策課の谷本課長補佐、国土交通省地方振興課の逢坂係長、総務省地域振興室の武田総務事務官からそれぞれの所管に関わるものについて見解が述べられた。
 さらに、群馬県下仁田町の岡田常夫町長から地上デジタル放送への対応が簡単にスピーディーにできるようにしていただきたいとの要望がなされた。
 次に、事例発表に移り、「川上村から海外へ レタス王国のチャレンジ」と題して、川上村 中島 修産業建設課長から発表があった。
 次に、講演に移り、「現代山村の現状と地域再生の課題」と題して、長野大学環境ツーリズム学部 大野 晃教授から講演があった。
 最後に、次回開催県については茨城県と決定され、支部長の草間吉夫 高萩市長から挨拶が行われた。
 翌11日は、川上村内の立体集出荷貯蔵施設(川上そ菜販売農協)、集出荷貯蔵施設(ディック信濃川上)、川上中学校(音楽堂・体育館)、ヘルシーパークかわかみを視察した。

◎事例発表「川上村から海外へ レタス王国のチャレンジ」の要旨は次のとおり。
 川上村は、標高1,100m〜1,400mの高原地帯にあり、夏場の冷涼な気候を活かしたレタス生産量は日本一である。人口は約4,600人、農家人口は約3千人、農家戸数は約600戸(うち専業農家約330戸)、1戸当たりの売り上げ2〜4千万円程度、農家所得約500万円程度となっている。農業粗生産額は66.3億円でそのほとんどがレタス,白菜等の野菜となっている。レタスの出荷時期には、午前1時頃から作業を行い、関東近郊のスーパーでは朝どり野菜として午前中に店頭に並んでいる。労働力確保のため、数年前から、国の外国人研修制度を活用し、中国人研修生約600人を受け入れている。スカイパーフェクトテレビを経由したチャンネル中国を全村に配信して母国の出来事とか情報を毎日提供するなど、村では研修生に対し特段の配慮を行っている。
 昭和63年から、生産の効率化や農業の戦略化を図るため、「農業情報ネットワークシステム」を構築し、より高度な気象情報や市況情報をリアルタイムで提供している。
 川上村ブランド確立のための国内PR活動として、観客に抽選で川上村のレタスをプレゼントする「神宮球場等でのベジタブルナイター」、「サッカーJリーグフロンターレ戦における即売会」、「長野県内のテレビ放送局による川上村レタスCMの放映」、「各種のイベントでの使用等のためのポスター、パンフレット、DVDの作成」等を実施している。
 減少する消費量や他産地との競合による生産過剰・価格低迷の打開に向けた新たなマーケットの創設、「川上村レタス」のブランド化(輸出することによる国内への波及効果)、新市場開拓により生産者の意識改革や国内外の新市場への攻め込みのため、我が国で最初のレタスの輸出に取り組んでいる。平成17年度から検討を開始し、平成18年度に台湾へのテスト輸出を行った。収穫から店頭に並ぶまでには船便のため一週間から10日程度を要するが品質にはほとんど問題がないこと、アメリカ産に比べ割高であるが品質・おいしさ等で十分勝負できること、検疫によりくん蒸処理されることがありその場合には品質が劣化し販売できなくなること等が確認された。野菜等を生で食べる習慣が定着していない消費者に川上村レタスをPRするため、百貨店等でフェアを開催して試食をしてもらい、また、企業と提携してドレッシングをセットで配布した。現地の人を川上村に招待して生産状況を確認してもらうことも行った。川上村のレタス検疫は出港前と台湾で実施しているが、収穫段階において国内向けレタスよりも外葉を多く剥き、その上で職員が虫をチェックする体制を確立し、19年度以降はくん蒸処理する事態は生じていない。また、検疫を行う検疫官を現地に招いて検疫を実施してもらい、検査で不具合が生じた場合、早急に対応ができる体制を確立している。商社を通じないで、大手小売店やカット工場に輸出している。19年度は約6,400ケースを輸出した。500万〜700万ケースの出荷量から見れば0.1%程度であるが、今後は目標数値を上げたいと考えている。また、香港、韓国への輸出を模索し、さらに、中国本土、シンガポールも視野に入れている。
 川上村における様々な取組は、日本の農業への起爆剤であり一石を投じるものであると確信しており、今度とも村長の提唱する攻めの農業を展開していきたい。

◎ 講演 「現代山村の現状と地域再生の課題」の要旨は次のとおり。
(山村の状況)
 総人口の中で65歳以上の高齢者が半分を越え、自主財源が入らなくなり、高齢者福祉とか介護とか医療関連の支出がどんどん増加し、財政維持が非常に困難になってくる自治体を限界自治体といい、集落を存続集落(55歳未満が半数)、準限界集落(55歳以上が半数)、限界集落(65歳以上が半数)、消滅集落(人口・戸数0)の4つの状態に区分して、一つの自治体の全集落をこれでチェックしていくとその自治体の安定度・崩壊度を計る物差しにもなると考え、20年前に問題を提起した。
 ここ数年の状況を見ると、限界自治体化が急速に進んでいる。国立社会保障・人口問題研究所の平成15年12月の「日本の市区町村別将来人口」をもとに私が計算したところ、2030年には全国で144の町村が限界自治体になると予測される。高知県の大豊町もその一つであるが、同町は2006年に限界自治体の第1号になり、高知県の池川町も2007年3月に限界自治体になった。予測よりかなり早く限界自治体化が進んでいると思われる。その背景には三位一体改革による地方交付税の減額があり、集落への住民サービスは一層低下していく。山村が限界自治体化していき、小規模な山村では存続集落が準限界集落に移行し、準限界集落が限界集落に移行し、限界集落に滞留していく、これが山村の実態といえる。

(限界集落の実態)
 私は、65歳以上の高齢者が集落人口の半数を超え(量的規定)、冠婚葬祭をはじめ田役、道役などの社会的共同生活の維持が困難な状況におかれている(質的規定)集落を限界集落とよんでいる。1990年代は西日本を中心に限界集落が問題化してきたが、2000年に入ると北関東、甲信越、北陸、東北、北海道にも問題が出てきている。
 2006年に国土交通省が過疎地域を対象に行った集落調査によると、6万を超える集落のうち 7,878の集落がいわゆる限界集落になっている。その中で、近い将来消滅していくと思われる集落は2,600を超え、そのうち10年以内が400を超えるとされている。
 限界集落の状況を次のように描写したことがある。
 「独居老人が滞留する場と化したむら。人影もなく、1日誰とも口をきかずにテレビを相手に夕暮れを待つ老人。天気が良ければ野良に出て、野菜畑の手入れをし、年間36万円の年金だけが頼りの家計に、移動スーパーのタマゴの棚に思案しながら手を伸ばすシワがれた顔。バス路線の廃止に交通機関をなくしタクシーでの気の重い病院通い。1か月分の薬をたのみ断られ、2週間分の薬を手にアジの干物を買い、杖を突きながら家路を急ぐ老人。テレビニュースの声だけが聞こえているトタン屋根の家が女主人の帰りを待っているむら。家の周囲を見渡せば、めぐら地(家周りの田畑)に植えられた杉に囲まれ、日も射さない主人なき廃屋。苔むした石垣が階段状に連なり、かって棚田であった痕跡をそこに溜めている杉林。何年も人の手が入らなず、間伐はおろか枝打ちすらされないまま放置させれている線香林。日が射さず下草も生えないむきだしの地表面。野鳥のさえずりもなく、枯枝を踏む乾いた音以外に何も聞こえない「沈黙の林」。田や畑に植林させれた杉に年ごとに包囲の輪をせばめられ、息を凝らして暮らしている老人。これが病める現代山村の偽らざる姿であり、<限界集落と沈黙の林>はまさにその象徴である。」

(限界集落の増加がもたらす問題)
 一つは、神楽など伝統芸能・伝統文化が喪失・衰退し、心の支えがなくなること。 二つは、広葉樹、棚田などの山村の原風景が喪失し、日本人の叙情性、感性を培う土台がなくなくなること。三つは、人がいなくなり耕作放棄地が増大し、間伐や枝打ちされない放置林が増加し山が荒廃する。そうすれば山に保水力がなくなり渇水問題や、鉄砲水による水害、林地崩壊を招き、川や海の環境悪化により下流域の都市住民や漁業者の生産と生活が脅かされること。「山と川と海は、自然生態系として相互に連関し有機的に結びついている総体的存在である」ことを示しており、その認識の重要性がいっそう増してきている。

(山村再生の方策)
 55歳以上が半数以上の「準限界集落」の段階にあるときに行政が存続集落に再生することが地域再生のためには重要であり、それが「予防行政」でありそれこそが行政の本来のあり方である。これまでの行政は国が決め、それを都道府県が市町村に下ろしそれを地域住民が受け取るという形になっている。自分達の地域は自分達の手でどう活性化していくか、そのための自分達の政策を作っていくことの重要性を20年前から提唱しているが、国、県、市町村にお金がなくなっている今こそ重要である。そのためには、それを企画立案できる人材の育成が必要であり、そのためにはプロジェクトリーダーが必要であり、県の職員の活用が考えられる。
 限界集落に対してはどうするか。限界集落の住民が町へいけば幸せになるという人がいる、実態調査をした結果では集落に住みたいという人が圧倒的に多い。従って、そういう住民がそこで住めるように支援していくことが必要である。買い物や金の出し入れ、食事など「ミニマムライフ」を支える仕組み作ることが必要である。多目的共同利用施設を作り、そこで生活に必要な最低限のことが賄えるようにし、集会もできるようにする、そうすれば安心して生活できる。
 農協の支所の廃止を契機にそれを活用して多目的共同利用施設に再編した例もあるが、知恵を出せばいろんな方法がある。
 遅れても、人間と自然が共に豊かになるような複眼的視点で考えていく必要がある。

◎ 各県から提出された要望事項(要旨)は、次のとおり。

要望事項 1(茨城県支部)
 山村地域における過疎化・高齢化対策の一層の推進について
(具体的説明)
 山村地域は、人口において3%を占めるに過ぎませんが、国土面積では約半分、森林面積では6割を占め、少ない人口で国土の大きな部分を担っています。そして国民意識もまた、森林をはじめとする山村地域の持つ資源を重要視しております。
 しかしながら、これらの資源を支える山村地域は、過疎化・高齢化の進展により一層厳しい状況にあります。いわゆる「限界集落」と呼ばれるような地域が活力を取り戻し、安心して暮らせるようになるために、さらなる支援の充実を望みます。

要望事項 2(群馬県支部)
 平成18年度に総務省、国土交通省が実施した「過疎地域等における集落に関する状況調査」の結果公表以降、「限界集落」という言葉がマスコミを通じて一気に広まったことに伴い、各省においても集落対策に関する多くの事業が創設されている。
 しかしながら、それらの事業の一部には、山村地域の集落の実態にそぐわない事業や町村からの要望を真に捉えきれていない事業などが見受けられる。
 高齢化の進行をはじめ基礎的な諸条件の厳しい山村地域への対策は、特に効果的な施策の展開が求められており、従来型の規制や要件にとらわれず、山村地域の実態を積極的に踏まえた事業の創設・運用を要望する。また、山村対策に関する事業は恒久的に実施する必要があることを認識してもらいたい。
(具体的説明)
 農林水産省が今年度実施している「小規模・高齢化集落支援モデル事業」は、全国で1,000の集落を想定しているが、現状45集落に留まっていると聞いている。中山間地域直接支払制度に取り組んでいる集落が、小規模・高齢化集落を支援する事業内容であるが、自分たちが住む集落の農地をまとめるのが手一杯であり、他の集落のことまで考えられないのが実状である。また、国土交通省の今年度からの事業である「集落活性化推進事業」は、市町村からの事案を基に開始されているが、採択基準が不明確であるため、採択に係る事前の調整等に相当の時間がかかっており、事業主体である市町村においても補助事業に係る予算措置ができない状況にある。

要望事項 3(山梨県支部)
 私達が住む中山間地では、少子化と若者の都会への流出によって、過疎化に歯止めがかからないのが切実な現状であります。
 また、高度情報化社会が進展しつつある趨勢の中にあって、情報基盤整備の立ち遅れによって、福祉・教育・交通防災等の面においても悪影響が生じ、過疎化を一層悪化させる大きな要因となっています。この為、早期に情報化の基盤整備を図り、住民の情報手段の確保の必要性を痛感しています。
 人あっての農村であり、農業振興でありますので、多大な財政負担を伴うとはいえ、まず都会との情報格差のない農村の住環境を整備することが、本町の農業振興にとって最重要な課題であると考えます。
 その為、以下の項目を農業基盤整備の一環として要望致します。
  1 高速インターネットアクセス網の整備促進
  2 地上デジタル放送への迅速な対応
  3 携帯電話通信網の早期整備促進
(具体的説明)
 これらの施策を一日も早く現実化するため、施策を実施するにあたって、補助率の嵩上げや新規補助事業等の措置を講じること。

要望事項 4(長野県支部)
 地上デジタルテレビ放送の対応について
(具体的説明)
 2011年7月アナログ停波に伴い、地上デジタル放送が本格稼動されます。
 現在、当村にはテレビ受信の中継局が5箇所ありますが、NHK以外の民放は、4局の内2局のみがわずか1箇所から発信しているだけです。
 この5箇所の中継局からの電波だけでは全村カバーできないことから、大小15箇所に及ぶ共聴施設によって対応しています。しかし、秋山地区にあっては長野県の民放が1波も受信できず、新潟県の民放を視聴しています。
 総務省信越総合通信局公表による「地上デジタルテレビ放送中継局ロードマップ(計画)」によると、栄村の放送開始は平成21年、中継局は1箇所のみで、NHK(総合・教育)とSBC信越放送及びNBS長野放送の3局とされ、県内民放TSBテレビ信州及びABN長野朝日放送は非該当となっており、デジタル放送に切り替わってもなんら問題解決にもならないばかりか、これに対応するための財政的負担が増加するだけであります。
 栄サテライト局には県内民放4局の開局を望むとともに、難視聴地域の解消を国の責任において実施されたい。また、受信できない地域に対応するための共同受信施設等の整備に対し、特別の財政支援を望みます。
 さらに、高齢化が進む中で、一人暮らし高齢者の新たな個人出費が予想されることから、生活保護世帯はもちろんのこと、これらの弱者世帯等への救済措置も講じられたい。


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