平成21年度全国山村振興連盟関東ブロック会議が、6月25日(木)〜26日(金)の二日間にわたり全国山村振興連盟茨城県支部(支部長 草間吉夫高萩市長)の主催により茨城県高萩市において管内の会員、支部事務局等約70名が参加して開催された。
会議は、まず草間茨城県支部長の主催者挨拶があり、来賓として出席した農林水産省農村振興局中山間地域振興課 谷本哲朗課長補佐、国土交通省都市・地域整備局地方振興課 石川裕一係長、総務省自治行政局地域振興室 榎本真也総務事務官及び林野庁森林総合利用・山村振興室 島内厚実課長補佐から挨拶があり、続いて地元の茨城県農村環境課の吉岡路裕課長から歓迎の挨拶があった。その他の来賓として関東農政局地域整備課の松井敏文係長及び齊藤沙織係員が出席し、全国山村振興連盟からは川上博志常務理事及び川島洋子参事が出席した。
 次に、議事に入り、先ず、6月19日に就任した川上博志常務理事から「6月5日に開催された山村振興実務研修会においては、平成21年度の山村振興関連施策の説明があったが、これらを十分活用していただきたい。7月3日の理事会では平成22年度山村振興関連予算・施策に関する要望を決定し、要請行動を行うこととしている。6月23日に「経済財政改革の基本方針2009」が閣議決定されたが、その中には、低炭素化への貢献としての森林吸収源としての森林整備・保全と木材・木質バイオマス利用の推進、健康長寿のための地域医療の再生、農林漁業の潜在力発揮プラン、農政改革の三本柱の一つとしての農山漁村力の再生等当連盟の要望に関連するものが随所に盛り込まれており、これらをテコに今後要請行動を進めていくこととしたい。」等中央情勢及び連盟の活動状況について報告が行われた。
 続いて、各県からの提出された要望事項について協議が行われ、提出支部の山梨県支部(説明者:石原弘崇主事)、静岡県支部(説明者:妻木和一事務局長)及び茨城県支部(説明者:梶山裕一事務局長)から説明がなされた後、林野庁森林総合利用・山村振興室の島内課長補佐及び農林水産省中山間地域振興課の谷本課長補佐からそれぞれの所管に関わるものについて見解が述べられた。
 次に、茨城大学人文学部 齋藤典生教授の講演、続いて茨木県大子町企画観光課 藤田貴則主査からの事例発表が行われた
 最後に、次回開催県については栃木県と決定され、栃木県支部 小森至事務局長から挨拶が行われた。
 翌11日は、日立市の「奧日立きららの里」、日立太田市の「竜神峡」及び「里美ふれあい館」、高萩市の「花貫物産センター」を視察した。

講演「山村の魅力を磨く−環境と交流の切り口から−」(茨城大学人文学部 齋藤 典生授授)の要旨は次のとおり。

1.はじめに
・「過疎集落研究会報告書」(2009年4月)の指摘に注目

@

「過疎集落における自然や空間はそこにあるだけでは、集落外部の者、とりわけ都市住民にとっての魅力とはなりにくいが、地域の意志と外部の者が共有する価値として共感されることで、持続や発展の可能性が生まれる」→可能性をどう形にするか、魅力をどう認識し、磨きをかけるか。

A

「過疎集落は高齢化が先行的に経験している地域であり、そこでの取組みは、今後急速に高齢化が進む大都市部の団地などでの高齢者の暮らしやすいまちづくりを進める上で、一つのモデルとなりうる」→20世紀とは異なる豊かさを形にする新しいライフスタイルを提案しうる場。
・ 戦後史のなかでの山村、とりわけ高度経済成長期以後は、"マイナー=な存在、"お荷物=的存在→魅力を磨き発信すること、交流の"貯金=をすることのなかから脱皮 の芽が生まれるのではないか。

2.前提として留意しておきたい点
(1) 2000年4月1日、地方分権一括法の施行→地方分権時代のスタート。
 2006年12月8日、地方分権改革推進法成立→
 分権の第2期改革スタート。
 方向性=国民・住民に最も身近なところで、行政のあり方を国民・
 住民がすべて自らの責任で決定・制御できる仕組みを構築
(2) これからは「二地域居住人口」が増加するという予測。
(3) 2007年から2010年にかけて約680万人(総人口の5.3%)の「団塊の世代」が定年年齢に。団塊世代がもつキャリア、ノウハウ、人脈を地域でどう受け入れ、どう活かすか
(4) 20世紀は農村の都市化の時代。21世紀は都市の農村化の時代。
 農村化とはー@自然や循環の回復(省エネ建物、屋上緑化)、
 A“農の心”の回復(=自然志向、田園志向、農山漁村志向の高まり)
(5) 住民を中心にした地域の活動により公平性・平等性を旨とする行政サービスや市場で取引されにくいサービスの提供=「官」が創り上げてきた単一の「公共」に対する新しい形の「公共」の拡がり。

3.山村の今、現場の一端
(1) 過疎集落の行方
過疎集落62,273のうち、10年以内に消滅する可能性集落423、いずれ消滅する可能性集落2,220。平成大合併により市町村単位での集落への目配りが困難化。
(2) 人口流出による山林・農地の不在地主化
例えば、作業道一本入れようと思っても、入り口の田は草ボウボウで(関係者)は地元にいなくて、というのが現実にある。
(3) “林業をめぐる"追い風”
@ 輸入木材価格の上昇
A 森林吸収源対策の加速化→公費による森林整備への期待
B 森林の公益的機能に対する認識の高まり

4.環境の切り口からみる山村の価値、森林の価値
(1) 東京都の排出量取引制度の導入
「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」が2009年4月1日から施行されている。2010年4月から削減義務開始される。
(2) 東京都新宿区と長野県伊那市の連携事例
「新宿区と伊那市との地球環境保全のための連携に関する協定書」が2008年2月10日に締結された。
(3) 森林湖沼環境税を導入した茨城県の事例
2008年度から2012年度までの5年間の課税。全国24番目。
(4) “企業の森づくり”仲人役・「いばらぎ森林づくりサポートセンター」
CSR活動が広がるなか、自治体・森林保有者及び企業を結びつける拠点として2008年9月に発足。森林湖沼環境税の補助事業として運営。

5.新しい交流の形を求めて
(1) 交流産業創出の試み 山形県西川町の事例
・交流インフラの整備 ・観光の通年化の取り組み 
・四季にわたるトレッキングを発想(残雪とブナの新緑等)
・月山かもしか学園の事業(自然・生活体験型教育旅行の受け入れ)
(2) 交流を演出する農山村の知恵と技
・安心院町(現宇佐市)のグリーンツーリズムに学ぶ(農村のふだんの
 暮らしふつうのサービスが一番喜ばれるという奇妙な感覚を楽しむ) 
・「ふだんの暮らし」に根づいた知恵と技を自覚することが大事
(3) 若者の力を活かす
例えば、NPO法人学生人材バンク(鳥取大学の学生が立ち上げ)の活動

6.おわりに
・ 環境意識の高まり、スローフード、地産地消、「農山漁村を肌で知る」団塊世代の定年等々、21世紀に入ってからいよいよはっきりしつつある"新しい風=を的確に キャッチし、その風にのること。
・ キッカケを待っている団塊世代や若者たちに多面的に働きかけるための情報発信
と彼らを巻き込むための仕組みづくり。

事例発表「山田ふるさと農園」(茨木県大子町企画観光課 藤田貴則主査)の要旨は次のとおり。

○ 概要
所在地:茨木県大子町末沢地内
面積:約17,300m2 区画:16区画(796〜1,745m2)
事業の内容:住宅用地300坪を20年間タダでかします!

○ 背景と経緯
(1) 背景
@ 若者の流出や少子高齢化等による過疎化 
A 地域活性力や集落機能低下
B 農地や森林の荒廃 C 団塊世代の大量退職 
D 自然・健康指向など新しいライフスタイル
(2) 経緯(平成19年7月概要決定。9月議会付議。10月募集開始)
@ 町所有の遊休地の解消・活用  
A 財政的に新たな開発等が困難
B 経費をかけずに現況のまま貸出 
C クラインガルテンは不可能 
D 住民の誘致(人口増)

○ 事業・目的効果
@ 町遊休地の有効活用(遊休地の解消) 
A 人口及び交流人口等の増加
B 固定資産税および住民税等の増収効果 
C 新しい人材(財)の確保
D 地元建設業者等への経済効果 
E 地元商店での購買・消費

○ 募集条件(平成19年10月〜12月に募集。)
@ 大子町以外に住所を有し、概ね65歳以下の者
A 定住又は二地域居住(年間90日以上滞在)
B 住宅建築にあたり、町内建設業者を利用し、自費で住宅を建築する者
C 住宅は平屋建てとし、近隣の景観を損なわない外観であること
D 契約後1年以内に居住すること

○ 優遇施策
@ 20年間無償で貸し付ける(20年後には、貸与更新や譲渡も可能)
A 家屋の固定資産税相当額を3年間交付 (土地の固定資産税はかからない)
B 一戸あたり50万円を交付する
  (条件:県内木材を2分の1以上・延床面積80m2以上)
C 市町村設置型浄化槽により、設置費用の9割程度を町が負担
  (施工業者は町指定)

○ 問い合わせ状況
@ パンフレット送付 780部
  東京220、神奈川170、千葉160、埼玉120
A 大子町HPアクセス19,000件 B 電話問い合わせ 4,700件
C 現地見学 580組  D 申込件数 179組

○ 居住者決定状況
@ 現住所 東京6組、千葉3組、神奈川2組、栃木2組、埼玉1組
      福島1組、新潟1組
A 居住別 定住13組  二地域居住3組(将来定住の可能性あり)
B 年齢(全居住者) 平均46.1歳、最高61歳、最低1歳
           9歳以下:6人、30代:3人、40代:6人
           50代:17人、60代:6人
C 世帯数 平均2.4人、最高4人、最低2人 子供のいる世帯:5世帯

○ 経済波及効果
@  消費 [定住]年間300万円、[二地域]100万円として  4億2千万円 
A  住宅建設 1区画1千万円として  1億6千万円 
B  合計(10年間推計)  5億8千万円

○ 今後の展開
@ 居住者へのアフターホロー
  (就業サポート、農業サポート、長期的総合的なサポート)
A 多くの問い合わせから得た住所録のデータ活用
  (空家等情報バンク、田舎暮らしアドバイザー、空家等入居支度金制度)

各県から提出された要望事項(要旨)は、次のとおり。

○ 要望事項 1(山梨県支部)
 森林を有する山村地域の自然環境の保全事業に対する全国森林環境税などの国民的な負担制度を創設すること
(具体的説明)
 森林は、環境保全、水源かん養、災害防止など公益的な役割を果たしています。また、バイオマス資源の供給源や炭素吸収源として低炭素社会の構築に重要な機能を担っており、その実現に向け様々な取り組みが開始されております。
 一方、森林を有する山村地域は、森林の荒廃、地域の過疎化・高齢化及び財政状況のひっ迫などの多くの問題がある中で、森林を保全していくため、森林の整備や後継者対策などの施策を、独自に推進する必要があります。
 県独自に税を導入をしているところも多くありますが、森林の持つ水源かん養などの公益的な機能を高め、活力ある森林社会を実現するためには、森林の整備・保全に対する国民の理解を一層醸成するとともに、国民の理解の下で、森林の整備・保全のための国民的な負担が望まれます。

○ 要望事項 2(静岡県支部)
 第3期「直接支払制度」の充実と財源確保について
(具体的説明)
 第2期対策では、水田(急傾斜地):21,000円/10a、(緩傾斜地):8,000円/10a、畑(急傾斜地):11,500円/10a、(緩傾斜地):3,500円/10aとなっていた。
 しかしながら生産性が劣り、かつ大規模農地所有ができない山間地域においては、この制度による1戸の農家への支給は、わずかなものとなってしまい、本来当制度が目指している山間傾斜地の適正管理の支援にとって力不足の感はぬぐえない。
 また当県の山間地では、畑地利用が中心であり、山間地を管理していくことにとって水田も畑地も同様の管理が必要となる。この様なことから、第3期対策では水田と畑地の区別はつけず、かつ面積当たりの単価をアップし、条件不利な山間地であっても農家が意欲を持って管理できるような制度充実を願いたい。

○ 要望事項 3(静岡県支部)
 農山漁村活性化プロジェクト支援交付金予算の充実確保について
(具体的説明)
 平成17年度から開始された第6期山村振興対策も、各地区で活性化計画の策定が進み具体的事業が実施されている。
 各地域で計画される事業は、どれをとっても地域活性化にとって欠くことのできない事業であるため、各地区からの要望に応えられるよう、十分な予算措置を願いたい。

○ 要望事項 4 (茨城県支部)
 新たな食料・農業・農村基本計画における山村振興対策の充実について
(具体的説明)
 食料・農業・農村基本計画は、食料・農業・農村基本法に基づき策定された国の農政の指針となるものですが、現行の基本計画は平成17年に策定され、5年が経過する平成22年には新たな基本計画を定めるために、現在審議を重ねているところと伺っております。
 そうした中で、農業農村が厳しい事態に直面しているとの指摘が聞かれます。これは、山村地域を有する私たちにとって、各自が実感しているところであります。
 つきましては、新たな基本計画において山村振興対策の充実を要望するとともに、施策の方向性など関連情報があれば、ご教示賜りたいと思います。


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