平成21年度全国山村振興連盟関東ブロック会議より
 
講演「山村の魅力を磨く−環境と交流の切り口から−」(茨城大学人文学部 齋藤 典生授授)の要旨は次のとおり。

1.はじめに
・「過疎集落研究会報告書」(2009年4月)の指摘に注目

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「過疎集落における自然や空間はそこにあるだけでは、集落外部の者、とりわけ都市住民にとっての魅力とはなりにくいが、地域の意志と外部の者が共有する価値として共感されることで、持続や発展の可能性が生まれる」→可能性をどう形にするか、魅力をどう認識し、磨きをかけるか。

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「過疎集落は高齢化が先行的に経験している地域であり、そこでの取組みは、今後急速に高齢化が進む大都市部の団地などでの高齢者の暮らしやすいまちづくりを進める上で、一つのモデルとなりうる」→20世紀とは異なる豊かさを形にする新しいライフスタイルを提案しうる場。
・ 戦後史のなかでの山村、とりわけ高度経済成長期以後は、"マイナー=な存在、"お荷物=的存在→魅力を磨き発信すること、交流の"貯金=をすることのなかから脱皮 の芽が生まれるのではないか。

2.前提として留意しておきたい点
(1) 2000年4月1日、地方分権一括法の施行→地方分権時代のスタート。
 2006年12月8日、地方分権改革推進法成立→
 分権の第2期改革スタート。
 方向性=国民・住民に最も身近なところで、行政のあり方を国民・
 住民がすべて自らの責任で決定・制御できる仕組みを構築
(2) これからは「二地域居住人口」が増加するという予測。
(3) 2007年から2010年にかけて約680万人(総人口の5.3%)の「団塊の世代」が定年年齢に。団塊世代がもつキャリア、ノウハウ、人脈を地域でどう受け入れ、どう活かすか
(4) 20世紀は農村の都市化の時代。21世紀は都市の農村化の時代。
 農村化とはー@自然や循環の回復(省エネ建物、屋上緑化)、
 A“農の心”の回復(=自然志向、田園志向、農山漁村志向の高まり)
(5) 住民を中心にした地域の活動により公平性・平等性を旨とする行政サービスや市場で取引されにくいサービスの提供=「官」が創り上げてきた単一の「公共」に対する新しい形の「公共」の拡がり。

3.山村の今、現場の一端
(1) 過疎集落の行方
過疎集落62,273のうち、10年以内に消滅する可能性集落423、いずれ消滅する可能性集落2,220。平成大合併により市町村単位での集落への目配りが困難化。
(2) 人口流出による山林・農地の不在地主化
例えば、作業道一本入れようと思っても、入り口の田は草ボウボウで(関係者)は地元にいなくて、というのが現実にある。
(3) “林業をめぐる"追い風”
@ 輸入木材価格の上昇
A 森林吸収源対策の加速化→公費による森林整備への期待
B 森林の公益的機能に対する認識の高まり

4.環境の切り口からみる山村の価値、森林の価値
(1) 東京都の排出量取引制度の導入
「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」が2009年4月1日から施行されている。2010年4月から削減義務開始される。
(2) 東京都新宿区と長野県伊那市の連携事例
「新宿区と伊那市との地球環境保全のための連携に関する協定書」が2008年2月10日に締結された。
(3) 森林湖沼環境税を導入した茨城県の事例
2008年度から2012年度までの5年間の課税。全国24番目。
(4) “企業の森づくり”仲人役・「いばらぎ森林づくりサポートセンター」
CSR活動が広がるなか、自治体・森林保有者及び企業を結びつける拠点として2008年9月に発足。森林湖沼環境税の補助事業として運営。

5.新しい交流の形を求めて
(1) 交流産業創出の試み 山形県西川町の事例
・交流インフラの整備 ・観光の通年化の取り組み 
・四季にわたるトレッキングを発想(残雪とブナの新緑等)
・月山かもしか学園の事業(自然・生活体験型教育旅行の受け入れ)
(2) 交流を演出する農山村の知恵と技
・安心院町(現宇佐市)のグリーンツーリズムに学ぶ(農村のふだんの
 暮らしふつうのサービスが一番喜ばれるという奇妙な感覚を楽しむ) 
・「ふだんの暮らし」に根づいた知恵と技を自覚することが大事
(3) 若者の力を活かす
例えば、NPO法人学生人材バンク(鳥取大学の学生が立ち上げ)の活動

6.おわりに
・ 環境意識の高まり、スローフード、地産地消、「農山漁村を肌で知る」団塊世代の定年等々、21世紀に入ってからいよいよはっきりしつつある"新しい風=を的確に キャッチし、その風にのること。
・ キッカケを待っている団塊世代や若者たちに多面的に働きかけるための情報発信
と彼らを巻き込むための仕組みづくり。