平成22年度全国山村振興連盟関東ブロック会議が、7月14日(木)〜15日(金)の二日間にわたり全国山村振興連盟栃木県支部(支部長 古口達也茂木町長)の主催により栃木県茂木町において管内の会員、支部事務局等約130名が参加して開催された。会議は、小森_至栃木県支部支部事務局長の司会のもとで進められ、その概要は次のとおりとなっている。

1.あいさつ
主催者あいさつが副支部長の佐藤 信鹿沼市長から、来賓あいさつが栃木県総合政策部 國谷 渡地域振興課長からあった。
来賓として、次の者が紹介された。(敬称省略)
 農林水産省中山間地域振興課課長補佐 猪俣英史
 国土交通省都市・地域整備局地方振興課企画専門官 石原晃彦
 国土交通省都市・地域整備局地方振興課課長補佐 石田 勲
 林野庁森林整備部計画課課長補佐 河野裕之
 林野庁森林整備部森林総合利用・山村振興室課長補佐 井上智晴
 関東農政局整備部地域整備課課長補佐 田村新一
 関東農政局整備部地域整備課山村振興係長 渡邊利津子
 関東農政局整備部地域整備課山村振興係 齊藤沙織
 全国町村会経済農林部副部長 菅原 力
全国山村振興連盟の役員として、次の者が紹介された。(敬称省略)
 全国山村振興連盟副会長 長野県根羽村長 小木曽亮弌
 全国山村振興連盟常務理事兼事務局長 川上博志

2.議事
(1) 情勢報告 全国山村振興連盟 川上博志事務局長
 連盟の大きな役割は山村振興に関する国の施策の充実・強化について関係省庁、国会議員に働きかけ、その実現を図ることにあるが、平成23年度の予算編成に向けて先日7月2日の理事会において要望事項を決定し、関係方面への要望活動を行った。12月2日には通常総会が開催され12月の予算編成に向けて要望活動を行うこととなっているが、要望内容をさらに充実したものとしていきたい。
 先日、地域主権戦略大綱が閣議決定されたが、山村自治体にも大きな影響をもたらすものであり、その具体化については十分注目をしていきたい。
(2) 国の施策説明
国土交通省、林野庁及び関東農政局の担当者から次のとおり説明があった。
(説明項目のみで、内容は省略。)
@ 国土交通省の山村振興対策  国土交通省地方振興課 石田 勲課長補佐
基幹的な道路の都道府県代行整備、集落活性化推進事業、社会資本整備統合交付金
A 森林・林業再生プラン    林野庁計画課 河野裕之課長補佐
森林・林業の再生に向けた改革の姿(中間とりまとめ)の概要
B 中山間地域等直接支払制度  関東農政局地方整備課 田村新一課長補佐
中山間地域等直接支払制度第3期対策のあらまし(平成22年度〜平成26年度)

3.事例発表
(1) 茂木町における住民参加型鳥獣害対策 茂木町農林課  河又博久主査
 発表の要旨は、次のとおり。

鳥獣被害の拡大に対処して、平成18年度から元気な地域づくり交付金等を活用して電気柵の設置、電気柵管理体制の整備、電気柵情報マップの作成、被害防止体制の強化、茨城栃木鳥獣広域対策協議会、GISマップの作成・活用等を推進している。

その効果もあって、平成19年をピークに、被害額は大幅に減少してきている。

これからのイノシシ対策として、次のようなことに取り組んでいる。

@

地域住民による対策(電気柵による自衛対策、イノシシを寄せ付けない環境づくり

A

茂木町の対策(イノシシ捕獲報奨金制度、住民参加型わな講習会等)

B

県、市町を越えた広域的な対策(茨城栃木鳥獣広域対策協議会、各種講習会の開催など)
(2) ―那珂川町の鳥獣害対策―「イノシシ肉を利用した地域活性化について」
・・・・・・・・・・・・・・・那珂川町農林振興課  益子泰浩係長 
 発表の要旨は、次のとおり。

鳥獣被害の拡大に対処して、平成19年度に農山漁村活性化プロジェクト支援交付金を活用してイノシシ肉加工施設を設置した。

イノシシ肉加工施設により、安心・安全な製品の加工出荷、新たな雇用の場の確保ができる他、農家(農作物被害の軽減等)、捕獲者(買上による捕獲意欲の向上)、地元飲食店等(特産品としての提供)にもそれぞれいい効果をもたらしている。

4.講演
「茂木町のまちづくり」 古口達也茂木町長 
 講演の要旨は、次のとおり。
 山村振興に関する私の考えを少しだけ述べさせていただいて、問題提起のひとつとさせていただきたいと思います。
 今から30数年前になると思いますが、「パパラギ」という一冊の本が話題になったことがあります。その内容は、「ポリネシアにある文明から取り残されたような小さな島に住む大酋長がヨーロッパに招待されますが、その酋長が島に帰ってきてからヨーロッパ文明とはなんであったかということを島民に報告した時のお話です。
 大酋長は島民に向かってこう語りかけます。ヨーロッパ人は私に飛行機や自動車やテレビを見せて、どうだヨーロッパ文明というのはすごいだろう。お前達もこういったものを早く持つようにならなければならない、そう自慢げに話します。最初は見るもの聞くものはじめてで少し戸惑いましたが、よくよく考えてみると、彼らの言っていることはどうも思想的に統一されていないように思える。私達がものという時には二つの考えがあって、一つはまさに飛行機や自動車などのように人の手によって作りだされたもの。もう一つは美しい姿だとかきらめく星空だとかこんこんと湧き出る清水とか海の幸や山の幸とか、つまり神が創り賜うたもの、その二つがあるのではないか。前者においてはその通りだが、後者においては私達はヨーロッパ人と比較してそれほど劣っているとは思えない。逆にはるかに多くのものを持っていて、豊かと思っているぐらいだ。
 彼らは私を美術館と称するところへ連れて行って、自分達は女性の裸の絵や彫刻を見て関心をしたり、私に向かってどうだ美しいだろうとしきりに自慢したりするが、私達は人間の体は美しいものであることはとっくに分かっていて、だから私達は裸で暮らしているのだ。こう島民に報告した。」という話です。
 皆さんいかがでしょう。私達もひょっとしたら思い違い、考え違いをしているのではないでしょうか。私達の前提として私達の住む山村地域は都市と比べてなにもかも遅れてしまっていて、また、都市と比べてなにもかも貧しくて早く都市に追いつくためにも、国や県の援助が必要だ、そんな風に考えてはいないでしょうか。
 実はそうではないのです。その考えは違うということをまずは私達自身が山村地域に生きる私達自身が気づかなければならないと私は思っています。私達の住む地域は都市と比べて決してものや心のない貧しい地域なのではなく、実は多くの日本人が都市に住む人々がとうの昔に失ってしまった「きらめく星空」や「美しい水」や「涼やかな風」がある。また、ドジョウやカエルやトンボの住む、そしてまた、なによりも祖先の残してくれた豊かな文化と家族も地域も助け合う互助の精神に満ち溢れた誇れる地域なのであります。私達の地域には確かに新幹線も道路もきらめくネオン街もありません。しかし、少なくても私達は事故米とか毒入り野菜の不安におののくといったような心配はなく、その意味では都市の人々に比べてはるかに豊かで幸福なのであります。
 私達は国や県に年に何度か私自身もそうですが陳情やお願いにまいります。今までは、私達の地域は貧しいから支援をして下さいと訴えていなかったでしょうか。しかし、本当は山村地域は優しく美しく豊かでこれからの日本にとって必要欠くべからずものであるからこそ保全をし次の世代に受け継いでいかなければならない。都市の繁栄は私達が暮らす農山村の繁栄があってこそ担保されるものであります。都市には都市の、山村には山村の価値がある。その価値は同等であることを国は認め具体的な政策に反映をしていくべきだ。そう訴えなければならないのでないでしょうか。
 もし、こうしたことに対して国のご理解がなおいただけないのであるとすれば、また、都市部の皆さんが空気も水もあって当たり前、食料などは国内でなければ海外から買ってくればいい。あるいは、二十四時間好きな時に好きなものが何時でも手に入るという時代が永遠に続くと思っているのだとしたら、私達はこれから結束をして、自分のまちやむらの人と親戚の人の分の水や空気を生み出す分しか山の手入れをしません。自分達の親戚の分の米や野菜しか作りません。どうぞ都会の皆さんは海外から水でも空気でも食料でも買ってそれで生活をして下さい。そう言いたいと思いますが皆さんいかがでしょうか。
 私達は、あらためて山村地域に生まれ、そこを終の棲家とできることに感謝をし、そしてそこに育ち暮らし続けることに喜びと自信と誇りを持って進んで行くことをお互いに誓い合っていきたいと思っております。挫けそうになった時にはあの南の島の大酋長の言葉を思い出して頑張っていきたいと思っています。
 さて、まちづくりのことです。これは私の独断と偏見ですけれども、まちづくりというのはやはり官主導でなければいけないと思っています。よく官民一体となったまちづくりといいますが、それは単なる言葉の幻想だと思っています。私は魚屋でした。民間は忙しいんですよ。忙しいから給料を払って役場の職員にまちづくりを任しているんです。その職員がまちづくりの先頭に立って働かなくては、いいまちづくりはできないと言っています。私は職員にも何時も、民間の委員さんを集めて会議をやって、「まちづくりをどうしましょう」なんてことは聞くなと言っています。その前に私も含めて私達役場職員は、このまちをこうしたいああしたい、そういうことをきちんとしてから、民間の人にも来ていただいて、そして「皆さん私達はこう考えますけれども皆さんはいかがでしょうか」と聞くべきだと言っています。
 私は民間から来ましたけれども、適材適所の人事などというものは私は役所にないと思っています。どこにいても仕事をしなければならないのです。給料をもらっているのですから。できる職員はどこにいってもできる、できない職員はどこにいってもできない。これが私が町長として8年間やってきた思いです。
 役場の仕事というのは組織でやっていかなければなりません。たったひとりでなどまちづくりはできません。皆に助けられて皆を助けて組織となってやってこそまちづくりはできるのです。少なくても上司の考えていることを慮れない職員は私は偉くなれないと思っています。
 私のまちづくりに対する考えの基本はこのようなものです。職員が頑張らなくてそのまちの活性化はあり得ない、そう考えています。明日は茂木中学校、美土里館、道の駅をみていただきます。すべて職員が皆さんに説明をすると思います。これらは職員が頑張ってくれたお陰だと私は思っていますし、町民にも職員が頑張ってくれたから、そしてそれを見ていた町民の皆さんのご協力をいただいたからこんな施設ができたと私は言っています。

5.次回開催県  
 群馬県と決定され、群馬県支部長 宮前鍬十郎神流町長から挨拶が行われた。

6.現地視察
 翌15日に次の個所の現地視察を行った。
(1) ツインリンクもてぎ
オーバルコースとロードコースを併せもつ世界最初のサーキット場。レース観戦の他、乗る・遊ぶ・学ぶ、創るを体験できる。
(2) 「茂木中学校」
「町有林を活用した町の歴史と町民の心に残る学び舎づくり」を基本コンセプトに、樹齢70年から90年の杉、桧を活用して建築。最長12mの丸太材や無垢の梁材を利用した構造を採用し、天井、壁、床などの内装もすべて無垢の板で仕上げられている。内装には通常の石油系塗料は一切使用せず、米ぬかとエゴマを主成分とした自然塗料を使用、生徒たちが雑巾がけをしている。また、環境に配慮して、太陽光発電施設を設置し、自転車置場や屋外倉庫も地域材を活用している。生徒用の机・椅子、丸太のベンチ、テーブル等は町が用意した桧材で整備されている。
(3) 美土里館
一般家庭から出る生ごみ、畜糞尿、枯葉、籾殻、間伐材等を一括処理して堆肥化するリサイクルプラント。原料の投入から堆肥化まで高度に自動化され、良質な堆肥ができあがる。公害や廃棄物を外に出さない環境にやさしい堆肥化プラント。堆肥化行程の中心に円型発酵撹拌処理施設を設置してスクリュー撹拌機による大量処分を可能としている。また、発酵により発生した臭気対策として、ブロアー収集による脱臭設備も完備している。  
(4) 道の駅もてぎ
 栃木県第1号の道の駅。次のような施設で構成されている。
野菜直売所
 地元産の採れたての野菜や山菜を販売。パッケージには生産者の名前を
 記載。
商工館
 エゴマ商品、ゆず商品、お菓子、地酒など茂木町の特産品の販売他。
おもてなし情報館
 茂木に関する様々な情報の提供。大型マルチビジョンや道路情報案内板、
 インターネット端末機。ギャラリー。    

《前へ》《次へ》