森林・林業再生プラン(平成21年12月25日農林水産省作成)に即した具体的な施策を推進するため、農林水産省森林・林業再生プラン推進本部が平成22年1月19日に設置され、具体的な施策の方向性については同推進本部に置かれた森林・林業基本政策検討委員会(座長岡田秀二)において検討が行われてきたが、6月10日に「森林・林業の再生に向けた改革の姿(中間とりまとめ)」が作成され、推進本部長である山田正彦農林水産大臣あて報告が行われた。
 その内容は、次のとおりとなっている。

1 改革の方向
 我が国の森林資源は利用期に達しつつある。これらの森林の維持・培養と資源としての利用、すなわち木材生産と公益的機能の発揮を両立させる森林経営の確立を通じ、10年間で国産材自給率50%以上を目指すことが重要な成長戦略。
 こうした森林経営を持続的に行っていくことは、同時に雇用創出等を通じた山村地域の活性化や地球環境への負荷の小さい低炭素社会の構築にも大きく寄与。
 しかしながら、これまでの森林・林業施策は、森林の造成に主眼が置かれ、持続的な森林経営を構築するためのビジョン、そのために必要な実効性のある施策、体制を作らないまま、間伐等の森林整備に対し広く支援。
 この結果、

@

小規模零細な森林所有構造の下、森林所有者に対する働きかけが十分でなかったこともあり、施業集約化や路網整備、機械化の立ち後れによる林業採算性の低下や需要者のニーズに応えられない脆弱な木材供給体制

A

採算性の低下や世代交代による森林所有者の林業に対する関心の低下
 @ これらが相まって施業集約が進展せず、これが採算性の悪化につながる状況
という悪循環に陥り、ようやく森林資源が充実してきているにもかかわらず、これを活かす体制や経営が育っておらず、基盤整備も立ち後れ、適正な森林施業が行われない森林が増加する状況。また、林業の低迷により山村での雇用機会が失われ、林業の担い手が減少し山村の過疎化も進行。このままでは、林業再生のチャンスを無にするばかりか、施業放棄による森林の機能の低下や持続的な森林経営の理念無く無秩序な伐採が進み戦後築いてきた森林の荒廃を招く恐れ。
 こうした状況を真摯に受け止め、森林・林業に関する施策、制度、体制について、

@

森林の多面的機能が持続的に発揮しうる森林経営を構築するためのビジョン、ルール、ガイドラインの確立に向け、法律改正を前提にした実効性ある森林計画制度の改正を行うとともに、

A

実効性の高い施策を効果的に推進しうる体制を構築するため、
a.国・都道府県・市町村の役割分担を明確にし、地域主権時代にマッチした現場で使い易くシンプルで分かり易い制度への変革
b.それぞれの段階(国、都道府県、市町村、森林所有者)における、各種補助事業計画の一元化など計画策定に関する負担の軽減
c.専門知識を持った現場密着の実行体制を整備(フォレスター制度の創設、森林施業プランナーの充実等の人材の育成)
等の抜本的見直しを行い、森林資源の利用期に適合した、新たな森林・林業政策を構築していくことが必要。
 このため、上記の視点に基づき、国、都道府県、市町村、森林所有者の役割の見直しを行いつつ、
 @ 適切な森林施業が確実に行われる仕組みを整えること
 A 広範に低コスト作業システムを確立する条件を整えること
 B 担い手となる林業事業体や人材を育成すること
 C 国産材の効率的な加工・流通体制づくりと木材利用の拡大をすること
を段階的、有機的に進めていくことにより、国産材の安定供給体制を構築する条件を整備し、10年後の木材自給率50%以上を目指す。これを通じて、意欲と実行力のある者による林業生産活動等が継続的に実施されることとなり、山村地域における雇用機会の確保を通じた山村の活性化や、二酸化炭素吸収源としての森林整備、炭素の貯蔵、二酸化炭素の排出削減に貢献する木材の利用により低炭素社会の構築にも大きく寄与。
 また、国有林は、我が国の森林の3割を占め、国民から様々な機能の発揮が求められていることから、森林・林業行政の観点から国が責任をもって一体的に管理するとともに、その組織・技術力・資源を活用し、我が国森林・林業の再生に貢献できるよう見直し。その中で、民有林・国有林が連携した森林共同施業団地の設定や木材の安定供給体制づくり、国有林のフィールドを活用した人材育成の推進について検討。

2 改革の内容
(1)全体を通じた見直し
 複雑で役割分担が不明瞭であること等により形骸化している森林計画制度を中心に、生物多様性の保全等新たな国民ニーズにも対応し、各主体がそれぞれの役割の下、自発的な取組ができる制度に見直し。併せて、国、都道府県、市町村の各段階における森林の取扱いのルールを明確化。また、それぞれの計画の役割・性格に応じ、適切なレビューを実施。

@

 森林整備・保全にかかるビジョン、基本的ルール等と、これらに伴う必要な計画量を示すことに限定。
 基本的ルール等については、皆伐面積の上限に関する最低基準を国が示すとともに、生物多様性の保全に関することなど、新たな国民のニーズを踏まえたものとなるよう見直し。
 計画量については、国土保全を担う国の責務に鑑み、流域単位(44流域:50万haオーダー)で示すとともに、都道府県と共有する計画量(同意協議事項)を国の責務を果たす上で最低限必要な伐採量、造林量などに限定するとともに、計画量の意味づけの明確 化や効率的な調整手法を確立。国の責務として、マクロ的な見地から森林現況や動態変化を把握し森林情報を整備。
 また、後述する3機能区分など、地方に押しつけていた仕組みを地方が自発的に採用できる仕組みに転換。
 さらに、森林・林業基本計画と全国森林計画について、実効性の高い計画制度を構築する観点から、策定時期を合わせ一体化するとともに、内容についても分かりやすいものに見直し。

A

都道府県(158計画区:10万ha規模)
 森林計画区ごとに森林の保続(成長量に見合った伐採量、齢級構成の平準化)を確保すること、広域な視点での森林の取扱いのルールの提示といった役割を明確化。
 森林整備の円滑化・木材安定供給体制の整備に向け国有林との連携を推進。
 国が定めた基本的ルールと整合性を取りつつ、地域特性を反映させた森林の取扱いのルール(ルールの具体的内容を定める市町村森林整備計画の指針)を策定するとと もに、計画事項についても自主的に追加できるよう見直し。
 森林計画区については、流域を念頭に行政界や地域特性を考慮するとの考え方を基本に、必要に応じ、都道府県と協議してその区域を整序。都道府県全体の林政の推進方針と計画区単位での保続確保について、例えば、計画区ごとの計画書を一冊にして計画区の計画量を付表とするなどの簡素化を都道府県の意見も踏まえつつ推進。また、各種補助事業計画の一元化を推進。
 また、各段階における森林計画の策定や、集約化を推進する際に、必要不可欠となる森林簿の情報について、その精度を向上させることが必要。このため、森林経営計画(仮称)を市町村が認定する際の情報や、伐採・更新が行われた際の情報について、都道府県と市町村の間で共有化を推進。

B

市町村(市町村流域:数万ha規模)
 具体的な森林の取扱いのルール(間伐や保育の基準、皆伐面積の上限、生物多様性保全のための施業上の配慮事項等)、路網の基本計画、集約化計画を地域のコンセン サスを図りつつ定めること、かつ、直接森林所有者や森林組合、林業事業体を指導しつつ進めることといった役割を明確化し、市町村森林整備計画が森林のマスタープラ ンとなるよう位置付け。
 森林経営計画(仮称)が作成されない森林(白地地域)については、伐採・造林の届出制、要間伐森林制度を見直すことなどにより適切な施業を確保。
 また、計画を図示化するとともに、機能区分等の区域設定については、地域の特性 を踏まえて、自主的な取組が行われるよう措置するとともに、計画事項についても自 主的に追加できるよう見直し。
 計画策定・実行に当たっては、市町村森林委員会(仮称)の設置などの方法により地域の関係者による協議、合意形成を図り、森林所有者等の林業関係者、NPO等と協働を推進。加えて、複数市町村の共同による計画策定・実行や、都道府県への計画策定・実行の委託といった手法も活用。また、区域の設定や森林整備の円滑化などの観点 から国有林との連携を推進。

C

森林所有者等(最小流域:数百ha規模)
 現行の森林施業計画制度を廃止して、効率的な森林施業を確保できる単位ごとに具体的・合理的森林施業、集約化計画、路網計画となる森林経営計画(仮称)制度を検討。単独又は共同で策定する森林経営計画についても検討。さらに両者の関連性についても十分検討。
 これにより、森林の生物多様性の保全など公益的機能の発揮とも両立が図られた、採算性の高い効率的な施業(持続的な森林経営の基礎)を推進するとともに、最小流域単位での計画的な木材供給量が把握可能(安定供給体制の基礎)。

D

国が示す3機能区分を止め、地域主導の機能区分制度の創設
 重視すべき機能に応じて目指すべき森林の姿を定めている、水土保全林、森林と人との共生林、資源の循環利用林の3区分について、区分の実施方法が解り難い制度との指摘が多く、また、地域において関係者が当該森林の位置づけや将来の姿について議論する上での材料として利用されていない実態を踏まえ、廃止。
 新たに、渓畔林やレクリエーションの用に供する森林など公益的機能を発揮すべき森林について、地域の実情や必要に応じて、地域の合意形成の下で森林の取扱方法や目指すべき森林の姿を定め、地方が自ら区分する制度を導入。この場合、国は、公益的機能を発揮すべき森林の種類や目指すべき森林の姿を例示的に示すことに留め、具体の区域設定は地方が実施する仕組み(白地もあり)。
 また、持続的な森林経営を通じて適切な整備を進める手法、セーフティネットとして公的主体が整備を進める手法及び対象森林について検討するとともに、地方が定める公益的機能を発揮すべき森林と調整。
(2)適切な森林施業が確実に行われる仕組みの整備

@

全ての森林所有者に対する責務の明確化
a.伐採、更新ルールの明確化、徹底
森林資源の成熟化に伴い、持続的な森林経営の理念無く無秩序な伐採が行われることが懸念される中、現行制度では、このような伐採行為の防止や伐採後の更新を確保する仕組みが欠如。
 このため、
ア.国が皆伐面積の上限に関する最低基準を明示した上で(保安林との関係について整理)、
イ.市町村森林整備計画において、地域の特性に応じた皆伐面積の上限値を定めるとともに、
ウ.不正な伐採が行われないよう、一定面積以上の伐採を抑止する仕組みを導入することや、市町村森林整備計画の基準に適合しない伐採行為により産出された木材を違法伐採木材として市場で排除する仕組みを導入。
 また、伐採後に適切な更新が行われない森林に対して、植栽の命令が発せられる仕組みの導入。
 さらに、伐採後の更新を推進していくため、これに必要な優良な苗木の供給体制を整備するとともに、シカなどの獣害対策を推進。
b.適切な森林施業の確保のための委託の推進
 森林所有者に対する働きかけが十分でなかったこと、採算性の低下や世代交代等による森林所有者の林業に対する関心の低下等が、施業集約化など効率的で儲かる林業に向けた取組の障害となりかねない状況。
 このため、全ての森林所有者に施業の必要性を認識してもらう努力を行った上で、自ら施業を行いえない場合には、意欲と実行力のある者への施業の委託、さらには森林経営の委託が進むような仕組みを創設。
 具体的には、市町村森林整備計画において、間伐等の施業が必要な森林全てを要間伐森林としてリストアップすることにより、森林所有者や意欲と実行力のある者に対して施業必要箇所を明示した上で、意欲と実行力のある者が当該要間伐森林を含め一体的な施業を行うことを推進。併せて、このような施業集約化に積極的に取り組む者を対象とする助成制度を創設。

A

まとまりをもった施業を実施しうる体制の構築
 利用期を迎えつつある資源を活用し持続的な森林経営を実現するためには、面的なまとまりの下、集約化や路網整備を進めつつ効率的な施業を進めて行くことが重要。
 このため、森林所有者の責務の明確化や代行制度を措置することと併せて、意欲と実行力のある者が、最小流域単位(数百ha規模)に面的なまとまりをもって集約化や路網整備等に関する計画を作成する森林経営計画(仮称)制度を検討。
 この場合、既に適切な森林施業を確保している森林所有者の取組を認める仕組みを
 検討。
 このことにより、最小流域単位で計画的かつ効率的な施業実施が明らかになり、木材の安定供給体制の構築に寄与するとともに、森林経営の自立に向けた環境を整備。
 また、森林経営計画(仮称)が継続的に作成されるよう、税制特例による支援策を措置。
 なお、集約化に当たっては、集約化施業や路網設計等に必要となる専門的な知識・技術を有していることなどの要件を満たす森林組合、民間事業体、大規模所有者など意欲と実行力のある者が誰でも森林経営の主体となれるよう、必要な森林情報の提供等を行うことと併せて、確実に森林経営計画(仮称)の作成や施業の受託を行う仕組みを導入。

B

施業集約化に積極的に取り組む者を対象とする助成制度の創設
 集約化等を進め持続的な森林経営を推進していくためには、個々の施業実施に対してまんべんなく助成する現行制度では限界。
 このため、持続的な森林経営に向けた取組を約束することとなる森林経営計画(仮称)の作成者に限定して、集約化に向けた努力やコスト縮減意欲を引き出しつつ、必要な経費を支払う新たな支援措置の創設を検討。
 この場合、助成対象者は、単に施業を受託する者ではなく、森林経営の責任を有している者に直接助成する仕組みを採用するとともに、合意形成など集約化に向けた取り組みについても支援。
 また、支援制度創設に当たっては、複雑な助成体系の簡素化、透明性の確保等を併せて実施。

C

公的主体によるセーフティネットの構築
 公益的機能の発揮を確保する上で、急傾斜地や高標高地など立地条件が悪く、自助努力等によっても適切な整備が図られない森林について、公的主体により広葉樹林化など将来的な負担がかからない整備を推進。

D

里山等における広葉樹林の適切な整備の推進
 かつて里山等においては、生活物資であった薪炭利用等のための循環利用を通じた適切な整備が行われ、生物多様性に富んだ広葉樹を主体とした森林が維持されてきたが、利用の途が途切れたことにより放置され、植生の遷移(生物多様性の変化)が進むとともに、竹の繁茂等の問題が発生。
 また、製紙用チップ、エネルギー利用など木質バイオマスの利用拡大などにより、里山広葉樹林の価値が見直される機運が生じる一方、今後、奥山も含め広葉樹林に対する伐採圧力が高まることが懸念される状況。
 このような状況を踏まえて、里山等における広葉樹林を生物多様性に富んだものに再生するとともに、地域資源を有効に活用するため、
 a.適切に整備するための施業体系の構築
 b.製紙用チップ、エネルギー利用など新たな需要に向けた供給体制の整備
 c.エネルギー利用に際しては、カーボン・クレジット取引の仕組み等を
   活用
等について推進。また、森林経営計画(仮称)に取り込む等により計画的な利用を確 保するとともに、繁茂等の問題が生じている竹の除去やその後の適切な管理と利用を 推進。
(3)広範に低コスト作業システムを確立する条件整備

@

施業集約化の推進
 低コスト作業システムを広範に確立するためには、そのベースとなる施業集約化を施策の基本に据える必要。
 このため、森林施業プランナーの育成の加速化、集約化計画の役割を担う森林経営計画(仮称)制度の創設、集約化森林への支援措置の限定化等により、意欲のある林業事業体等が行う施業集約化を助長する施策を集中的に推進。施業集約化を進める上で欠かせない境界の明確化については、国土交通省とも連携し加速化。
 また、民有林と国有林が一体となって効率的に路網整備や間伐等の森林整備に取り組むための森林共同施業団地の設定を推進。

A

路網基準や整備方針の明確化
 我が国の森林は、傾斜、降雨量、土質等極めて多様で厳しい自然条件の下にあることから、路網作設に当たっては、これまで各地で、地域の条件に応じ、知見、経験の蓄積により工法が発展してきた一方で、損壊する事例もあり、簡易で耐久性のある路網作設の基本的事項の整理が必要となっている状況。
 このため、規格構造、個別工法や注意事項(伐開幅、横断溝、排水、丸太組工、根株、路肩等)などについて整理を行い全国的に共通する規程・技術指針等を作成。また、路網計画における林道、森林作業道等それぞれの役割分担、自然条件、作業システム等に応じて林道、森林作業道等が適切に組み合わされた路網ネットワークの基本的な考え方などを整理。

B

路網作設オペレーターの育成や路網整備の加速化に向けた支援
 簡易で耐久性のある路網の整備を進めていく上で、現場の地形や土質等の現場の条件を踏まえて路網計画を作成できる技術者や設計に沿って路網の作設ができるオペレーターなどの現場技能者が必要。このため、技術者や路網作設オペレーターを体系的に育成する仕組みを創設。
 また、10年後にドイツ並みの路網密度を達成するため、路網作設オペレーター等の育成と併せ、路網整備を加速化させていくための支援を拡充。

C

機械化の推進等
 森林施業を効率的かつ効果的に実施するため、先進的な林業機械の導入・改良や路網と作業機械を組み合わせ低コスト・高効率化を進め、地域に応じた多様な作業システムを明らかにするとともに、その整備・普及を推進。
(4)担い手となる林業事業体や人材の育成

@

持続的な森林経営を担う森林組合改革、林業事業体の育成
 責任を持って森林経営計画(仮称)を作成するなど地域の森林経営を担いうる組織体や、競争原理の下で効率的な施業を実施しうる林業事業体を育成するため、森林組合、林業事業体の役割を明確化しつつ、それぞれを早急に育成。
 森林組合については、施業集約化、合意形成、森林経営計画(仮称)作成を第一の業務とするといった役割を明確化。
 また、員外利用についてのルールを整理し厳格に運用するほか、森林組合に対する組合員のチェック機能の確保、森林組合作業班が行う事業に関する林業事業体とのイコールフッティングの確保の仕組みを構築。
 林業事業体については、規模が小さい事業体が多く、機械化も進んでおらず、生産性が十分に上がっていないものが多い現状。木材自給率50%に向けた木材生産の拡大を図るためには、効率的な作業システムの導入及び機械化を促進し、生産性の高い木材生産を行いうる林業事業体の育成が必要。
 こうした林業事業体を育成するに当たっては、まず、継続的に事業を営めるよう、事業量や森林所有者等からの信頼を確保することも不可欠であり、そのため、必要な事業実行能力、社会的信用、人事管理能力などを向上させるため新たな仕組みや手法を構築。

A

イコールフッティングの確保
 持続的な森林経営を実現するためには、段階的に施業の委託から森林経営の委託へ誘導していくことにより、まとまりを持った施業の実施を責任を持って進めることのできる体制を構築することが重要。
 このため、森林組合、林業事業体、大規模所有者など意欲と実行力のある者が誰でも森林経営の主体となれるよう、施業集約化に向けた合意形成・計画づくりの段階でのイコールフッティングを図るため、必要な森林情報を公平に提供できる方策を導入。
 また、森林経営計画(仮称)に従って事業を実行する段階で、計画作成者が明確かつ客観的な基準で事業実行者を選択し、選択結果について透明性を確保し説明責任を果たす仕組みを導入。
 さらに、森林経営計画(仮称)を安易に変更できない仕組みとしフォレスターによるチェックを働かせることにより、員外利用の厳格化と相まって、いわゆる森林組合による抱え込みを防止しつつ、一定の能力を備えた森林組合、林業事業体によって、競争原理の下、効率的かつ質の確保された森林施業が推進されるよう、登録・評価制度等、森林組合、林業事業体の育成方策を導入。

B

人材育成
 以上の取組を実効性あるものにするため、a.市町村行政を補完するフォレスター制度、b.戦略的経営を推進する体制の整備、c.路網作設オペレーターの育成等についての方策や、d.人材育成体制を構築。
a. フォレスター制度の創設
新たな仕組みを推進する上で、市町村行政の役割が重要となるが、現状の体制では十分な役割が発揮しがたい状況。
このため、森林・林業に関する専門知識・技術等に一定の資質を有した者にフォレスターとしての資格を認定し、その権能として、市町村森林整備計画の策定や市町村が行う行政事務に携わることができる仕組みを検討。
 具体的には、フォレスターが市町村行政に関与し、適切に活動を行うための体制を構築するとともに、当面は都道府県に配置されている林業普及指導員や国有林の技術者等を所要の制度的な手当を行いつつ活用することにより市町村行政をバックアップできる体制を構築。
b. 森林施業プランナーの能力向上による戦略的経営を推進する体制の整備
集約化施業を推進するため森林施業プランナーの育成を図る。さらに、森林所有者のために森林経営計画(仮称)を中心となって作成するとともに、木材の安定供給、適時・適切な販売など、森林組合、林業事業体等の戦略的経営を推進するため、森林施業プランナーの能力向上を図るなどサポート体制を整備。
c. 路網作設オペレーターなどの技能者の育成や誇りを持って仕事に取り組める体制の構築
 路網作設オペレーターや効率的な作業システムによる間伐等を行う作業者などの技能者が、安定的、有利に雇用され、技術を高めつつ仕事に取り組めるよう、OJTやOFF−JTの研修内容の充実や技術・技能を認定(グリーンマイスター(仮称))する仕組みとともに、これらの技能者を雇用していることが林業事業体の事  業実行能力の評価につながるような仕組みについても併せて導入。
 また、建設業従事者等からの新規参入も含め、幅広く人材を育成。
d. 人材育成体制の構築
 戦略的・体系的に人材を育成するため「人材育成マスタープラン」を作成するとともに、国有林のフィールド・技術力の活用なども含め、人材を育成する体制を構築。
(5)国産材の効率的な加工・流通体制づくりと木材利用の拡大
 木材自給率50%を達成するためには、需要者ニーズに応じた安定供給を実現することが不可欠。このため、川上から川中・川下までのマッチング機能を備えた商流・物流の構築と価格変動に左右されにくい安定的取引を確立していくことが必要。
 また、効率的な流通体制づくりは、国有林と民有林との連携を強化することで効果を上げる必要。
 併せて、川上側から計画的かつ安定的に供給される木材を最大限利用し、川上側へその利益を還流させていくために、様々な分野で木材利用の拡大を図ることが必要。
 木材利用については、木材に固定された炭素を長期間にわたって貯蔵し地球温暖化防止機能を最大限に発揮させる観点から、建築物等のマテリアル利用から化石燃料を代替するエネルギー利用までカスケード化を推進。
 このため、以下のような取り組みを推進

@

質・量ともに輸入材に対抗できる効率的な加工・流通体制の整備
 計画的かつ安定的に供給される原木を、需要者側へ安定的に供給するためには、輸入材流通に匹敵しうる効率的な流通システムを構築することが必要。このため、中間土場、市売市場などのストックヤード機能の活用を含めた原木流通の低コスト化・効率化を推進。また、ロットをまとめることにより、今まで利用が低位だったチップ用材等の森林資源の利用率向上を推進。

具体的には、商流面では、大口需要に対応できる安定供給を行うための素材流通
コーディネーターの育成、物流拠点間のネットワークの構築、森林所有者からユーザーまでを範囲とした需給情報を受発信する体制、IT利用に基づく徹底した流通、在庫管理技術の開発と普及を推進。
 また、物流面では、中間土場を適正配置し、ロットの確保、仕分け、検知作業等による価値の付加と輸送の効率化を推進。国有林と民有林が連携して安定供給体制づくりに努めるとともに、国有林にあっては、急激な木材価格の変動時のセーフティネットとして国有林材の供給調整を実施。
 今後、大径材が増加してくることも踏まえつつ、スギ・ヒノキ中心の国産材の利用を拡大するため、乾燥材、JAS製品など品質、性能の確かな製品を大口需要者などへ安定的に供給できる加工体制の構築を図るとともに、木材利用の多様化や輸出も視野に入れた技術・製品開発を推進。

A

木材利用の拡大
ア) 建築物等への利用
 「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年5月26日法律第36号)に基づき、国が設置する低層の公共建築物については、原則全て木造化を図るとともに、中高層の公共建築物においても内装材・外装材への木材利用を推進。
 また、木造住宅や大規模木造建築の設計者など木造建築に関わる人材を育成するとともに、マンションの内装材や住宅のリフォーム分野における木材利用を推進。
 地域の製材工場や工務店の連携による消費者のニーズに対応した特色ある家づくりなど、地域材の利用を推進。
 土留め工など治山事業への利用をはじめ、土木工事や外構材への木材利用を推進。
イ) 製紙用パルプ・チップへの利用
 国産材の比率が低い製紙パルプでの利用拡大を図る。
 具体的には、輸入針葉樹のパルプ・チップに対抗できる流通体制、広葉樹林からの供給体制の整備を推進。
ウ) 木質バイオマスの総合利用
 パーティクルボード(PB)、ファイバーボード(FB)、WPCなどの木質系材料及び石炭火力発電所での混合利用などのエネルギー利用による木質バイオマス利用を推進するとともに、木材を原料としたバイオマスプラスチック等の新たな用途の研究・技術開発を推進。
 また、経営的・技術的に整合の取れた木質バイオマス利用の仕組みづくりと着実な普及体制の整備を推進。
 なお、木造公共建築物や地域材住宅、エネルギー利用等に関しては、関係各省との連携を図りつつ取り組みを推進。

B

消費者等の理解の醸成
 森林の多面的機能を持続的に発揮させるためには、森林資源を適切に整備しながら循環的に木材を利用していくこと(植える→育てる→使う→植えるという森林のサイクル)の重要性について、理解を深める観点から、青少年等に対して森林環境教育や木育を推進。
 また、地球温暖化防止や森林整備への貢献など国産材の環境貢献度について、カーボンフットプリントなどの「見える化」を進めるとともに、合法木材等の普及や違法伐採対策の強化、カーボン・クレジットの活用等により木材利用に対するインセンティブを付与するなど、木材利用に対する消費者の理解を醸成し、木材利用の拡大につなげていく取り組みを推進。
 NPO等のネットワーク化を図りつつ、国産材の実需に結びつけていく運動を展開する観点から、「木づかい運動」を見直し。

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